「いつかは自分のブランドを」と 「大量の繊維ゴミをなくしたい」が繋がった
生地工場で余った端切れや着古された衣服など、国内で年間に廃棄されている繊維原料・製品は170万トンにのぼる。国民1人当たり長袖シャツを1年に50着以上捨てている換算だ。
ウィファブリックは使用されずに眠っていた糸や生地にデザインを加え、タオルやバッグなどの製品によみがえらせる事業で急成長している。
「いつか自分自身のブランドを立ち上げたい」と志し、繊維商社に就職した。あるとき自身が企画した衣料品がごっそり売れ残り、大量に廃棄されたと知った。調べてみると、国内で毎年170万トンもの繊維原料・製品が捨てられていると知った。いてもたってもいられず独立した。
デニム産地の岡山で1万m分もの生地が廃棄される予定だった。産地に掛け合いその生地を安価に仕入れ、エプロンやトートバッグに仕立て上げた。だが仕入れだけで創業資金があっという間に減っていく。「このまま死ぬんちゃうか」。底知れぬ不安にさいなまれた。
心掛けたのは「飽きが来ず長く使ってもらえるよう」なシンプルなデザインと「日本のものづくりを復権させるため」後継者がいる技術の確かなメーカーに生産を依頼することだ。「繊維ゴミを減らし、高品質の製品を手ごろな価格で販売し、ひいては国内のものづくりを守ることにもつながる」。
共感を呼ぶビジネスモデルは巻き込む力も強い。
「紡績会社に大量の廃棄物を使いたいとお願いしたら嫌がられはしないか」との不安は杞憂に終わった。飛び込みで訪れた複数の百貨店バイヤーから「うちで扱いたい」と期待され、確かな手ごたえを感じた。
高級糸を使った今治タオル、ベルベットを使ったクッションなど創業から1年で品目は80にまで増えた。廃棄するはずだったデニム生地の一部はすべて使い切ることができた。
また、使い古された服を集め糖化しバイオマスエネルギーにかえる徹底したリサイクルのシステムも確立している。最近は木材や金属など異素材からの話も舞い込みつつある。
廃棄物をデザインでよみがえらせるビジネスの広がりは計り知れない。
▲代表取締役社長 福屋 剛氏
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)