《講演録》『孫子の兵法』に学ぶ、戦わずして勝つ企業経営【後編】
2018年3月26日(月)開催
≪ナレッジセミナー≫『孫子の兵法』に学ぶ、戦わずして勝つ企業経営
長尾 一洋氏
株式会社NIコンサルティング
代表取締役・中小企業診断士
約2500年の歴史を持つ『孫子の兵法』。古代中国で用いられただけはなく、日本では武田信玄が「風林火山」として取り入れたり、現在ではペンタゴンで研究されていると言われるなど、古今東西幅広く活用されている。そんな『孫子の兵法』を経営コンサルタントで孫子兵法家の長尾一洋氏が、現代ビジネスに役立つように意訳し、解説した。
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≫「独自ドメイン」を構築することで、競合との戦いを略す
みなさんは「自社が何屋か?」を考えたことはありますか?一般的には、作っているモノやサービスで定義付けていると思います。しかし、私はもう一歩踏み込み「便宜的定義」で考えることをオススメしたいのです。
これを『メタボ対策業になった、魚屋さんの話』という一例で、お伝えしたいと思います。魚屋さんのほとんどが、「新鮮さ」や「品揃え」、威勢のよい「いらっしゃい」という接客で競っていると思います。
その先にあるのが価格競争。同じような戦い方をすることで、どんどんと疲弊していきますよね。そこで、考え方を変えるのです。
例えば「メタボに魚が良いと思って、買いに来たんだよ」というお客様が来たとしましょう。ここで「メタボに良いことをビジネスにしよう」という発想が生まれます。この発想をプロとして徹底的に分析。確信を持つことができ、“ビジネスチャンスが眠っている”と思ったら「メタボ対策業」になるという道を選ぶことが可能です。
「メタボ対策業」になることで、これまで競合だった「お肉屋さん」や「八百屋さん」に対して、“メタボに効果のあるお肉や、野菜を持ってきて一緒にビジネスをしよう”と呼びかけ、コラボすることができます。病院と連携したり、レストランを併設したりしてもいい。
──これを独自領域を創造する「ドメイン発想」と言います。とはいえ「いや、今は魚屋だから、無理だ」という話があるかも知れません。しかし、長期的計画、20年単位でストーリーを考えたらどうでしょうか。
GoogleやFacebookも、20年前には無かった企業。でも、今は世界を席巻していますよね。「20年後に勝てるストーリー」を立案して実行すれば、絶対に勝てるのです。
実は私自身、20年前に『孫子兵法家』を名乗った時、孫子の大家であり、競合となる大先輩がすでに活躍しておられました。しかし、20年単位で「勝てるプラン」を考えたのです。具体的には、大先輩が手を出していなかった「漫画」と「ネット」で攻めました。まさに、「戦わない」という戦略です。
現在、ネットで『孫子兵法家』と検索すれば、私の名前がトップに出てきます。「孫子」で検索しても、上から数えてすぐに私のサイトが表示されていますね。こうした独自領域を創造することが、「ドメイン発想」なのです。
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株式会社NIコンサルティング
代表取締役
長尾 一洋氏
横浜市立大学商学部経営学科を卒業後、経営コンサルティング会社で営業指導、戦略策定、人事改革などを経験し、課長職を経て独立。1991年に㈱NIコンサルティングを設立し、中堅・中小企業の経営体質改善、営業力強化、人財育成などに取り組む。ITの活用にも積極的に取り組み、1998年から開発販売している「可視化経営システム」の導入企業は4800社を超える。2500年前から伝わる最強の兵法『孫子』の知恵を現代企業の経営に活かす孫子兵法家としても活動中。【ブログ】http://www.kazuhiro-nagao.com