《講演録》手間ひまを価値に! 東海バネ工業があえて選んだ『非効率』とは
《講演録》2020年1月20日(月) 開催
【ものづくりビジネスセミナー】
手間ひまを価値に!東海バネ工業があえて選んだ『非効率』とは
夏目 直一氏(東海バネ工業株式会社 代表取締役)
大量生産が主流のバネ業界で、平均製造ロット5個の多品種微量オーダーメイドに特化し、圧倒的な存在感を示す東海バネ工業株式会社。3代目社長の夏目直一氏がビジネスモデルを構成する要素と、それを支える人材観について語る。
▶特殊な環境で使われる当社のバネ
当社がつくるバネは主に3種類あります。まず「コイルバネ」。バネの代名詞的存在で伸び縮みの量が一番多いのが特徴です。当社では外径が数ミリから60cm、高さ1m60cmまでをつくり、大きなものは世界最大級と自負しています。
次に「サラバネ」。形状がお皿のようなバネで、組み合わせて使うのが特徴です。力の大きさで言うと300トン。当社のサラバネは寿命が一般の2倍以上という特徴があります。
そして「板バネ」。様々な形状や寸法で活躍するバネです。特に当社のバネは錆びない、温度もマイナス273℃からプラス700℃の特殊環境まで耐えることができます。
これらのバネがどこに使われているのか。たとえば、大きなコイルバネは東京スカイツリーのゲイン塔です。放送用アンテナ設備を取り付ける電波塔として重要な部分です。その中にあるTMDという制振装置に当社のバネが12個装着されています。
また、発電所。そこで使われているタービンの中は非常に高温です。そんな環境でもしっかり役に立つバネを提供しています。
そして最近、力を入れているのが宇宙関係です。ロケットのエンジンに燃料を送るレギュレーターバルブに当社の特殊なバネを採用していただいています。人工衛星の中にも使われています。
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