《講演録》手間ひまを価値に! 東海バネ工業があえて選んだ『非効率』とは
3番目に「職人」。多品種微量は手作りが主流です。数が少ないので機械だけでは完結しないのです。そもそも機械だけで製造可能なバネは当社には注文が入って来ません。注文の中にはかつてつくったことのないバネもあります。1個だけという注文もありますが、躊躇なくチャレンジします。
私たちがめざす究極の姿は試作なしの一発製造です。そのために過去のデータベースをフル活用できるシステムを持っています。
職人には男性も女性もいます。やってみないとわからないので、失敗OKの挑戦風土をつくりあげようとしています。特に新人育成のためにまずやらせてみる。部署に関係なく社員全員にバネ製造技能士国家資格を取るよう奨励しています。
4番目に「納期」。1個でも確実な納期を約束しています。納期の設定は注文が来た順番です。受注金額の大小で差はつけません。困っているのは皆さん同じだからです。おかげさまで昨年の納期の厳守率は99.95%になりました。
5番目は「お待たせしない困りごと対応」。困った時は早く解決したいのがお客様の心情です。そのため私たちは納期の相談は即、技術の相談は1時間、設計図面は6時間で出すという対応をとっています。
担当者がいないから対応できないのではなく、お客様からいつ問い合わせがあってもいいように、組織もITシステムも対応しています。
これらを徹底することで、結果的に競争を避けるビジネスモデルが成り立っています。なぜならこの5つの構成要素にはすべて手間ひまがかかるからです。非効率すぎて他社は真似しようと思わないのです。「そんなことやってどうするの」という世界ですね。
当社は創業当時からこうしてきました。76年たった今、二代目社長(現顧問の渡辺良機)が創業社長からそれを受け継ぎ、それに磨きをかけて現在のビジネスモデルに仕立て上げて、ようやくここまできたという状況です。
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