《講演録》『孫子の兵法』に学ぶ、戦わずして勝つ企業経営【後編】
≫最後に「呉越同舟」を現代ビジネスに意訳
「敵対している者同士で、向こう岸に渡る」というのが、呉越同舟です。普段は、いくらいがみ合っていても、運命共同体となれば協力せざるを得ません。
この場合、「敵」を、競合と考えるのではなく「自社」と考えてみてください。今、会社組織はほとんどが「分業制」ですよね。だから、どうしても「セクト主義」が蔓延してしまいます。
みなさんの会社でも「こんなプロジェクトを推進したい」という斬新な意見が出てきた時、表向きは社員全員が賛成していても、「あの部署のあいつが音頭をとるなら、協力してはいけない」とささやくような、足の引っ張りあいがあったりしませんか?
だから、敵は社内にいるのです。これが、現代ビジネスに意訳した場合の呉越同舟ですね。しかし目的は同じ。「協力せざるを得ない」という目標を設定し、協力せざるを得ない状況を意識させるのが、上に立つものの務めです。
特に現代は、未来が見えづらい時代。だからこそ、「呉越同舟」で社内の協力をより強固なものに鍛えることが大切だと思いますね。
(文/仲西俊光)
株式会社NIコンサルティング
代表取締役
長尾 一洋氏
横浜市立大学商学部経営学科を卒業後、経営コンサルティング会社で営業指導、戦略策定、人事改革などを経験し、課長職を経て独立。1991年に㈱NIコンサルティングを設立し、中堅・中小企業の経営体質改善、営業力強化、人財育成などに取り組む。ITの活用にも積極的に取り組み、1998年から開発販売している「可視化経営システム」の導入企業は4800社を超える。2500年前から伝わる最強の兵法『孫子』の知恵を現代企業の経営に活かす孫子兵法家としても活動中。【ブログ】http://www.kazuhiro-nagao.com