商品開発/新事業

《講演録》フェムテック 流行のその先へ 未来を創る新産業

2022.02.15

 
【トークセッション】フェムテックが切り拓く未来
〈ファシリテータ〉株式会社AZ 藤堂ちどり氏

 
◉日本におけるフェムテックの現状

Amina:日本には、吸水ショーツ、デリケートゾーンケア、セクシャルウェルネス、それからメディア関連の企業が多いですね。「アメリカに比べて、なぜ日本はこの分野で遅れているの?」とよく聞かれるのですが、全く遅れてなんていません。ですが、フェムテック商品や医療制度へのアクセスは国のヘルスシステムによって異なります。日本にフェムテック商品がいまだに少ないのは国民皆保険制度があるというのも理由の一つだと私は考えています。安全で質の高い医療サービスが気軽に受けられるために、産業としての発展性・必要性を見出す機会がなかった。ですが、最近になって、その辺の議論や人の興味関心が変化し始めたのではと。

 
◉消費者の反応の変化

michi kake:2年前の開店時に比べて、お客様とも社員間でも、自分の身体や心のことが圧倒的に話しやすくなったと感じます。例えば、吸水ショーツそのものの説明が大変だったのに、いまでは吸水ショーツと言うだけで理解する人が増え、購入を目的にご来店されるお客様もいらっしゃいます。
Amina:大手アパレルメーカーも吸水ショーツを販売するようになったいま、この2年間で興味のある人には行き渡った気がします。ただ、そのつぎの層へのアプローチができていないと感じます。
michi kake:「その通り、多くの女性が暮らしに取り入れるまでには至っていないですね」。

 
◉2兆円市場実現の可能性

michi kake:小売・物販の立場からは、予想される2兆円市場が想像できないのですが。
Amina:確かに、2兆円市場の7〜8割はBtoBやインターネットなどテクノロジーを使った世界になるので、小売の市場は小さくなります。でも、生理用品の市場規模は1500億円まで伸びると予想されるなど、ものを通して小売の市場が広がるなかにIT系が参入することで、最終的に2兆円市場が生まれるのではと考えています。

 
◉私たちができる企業支援

Amina:海外のフェムテック企業へは、日本国内進出の際のマーケティングやブランディングのお手伝いをしています。フェムテック企業の皆様、フェムテック領域にご興味のある日本の企業様には社内研修のお手伝い、新規事業のコンサルティングから薬事、流通、マーケティング、販売までサポートしています。
michi kake:公式サイトで商品紹介をしたり、情報発進の場として売場スペースを使っていただくこともあります。ご相談があれば、一緒にやっていきましょうというスタンスです。

 
◉事業参画のためのアドバイス

Amina:日本のビジネスネットワークではまだ男性が多数派です。いいアイデアを生み出し、スムーズに承認してもらうためには、フェムテック事業のチーム編成は男女混合にするとうまくいくような気がします。まず第一歩を踏み出したいという方には、実際にフェムテックアイテムを使ってみて、その経験談を大切な人と共有することをおすすめします。

 
(文/花谷知子)

 

藤堂ちどり氏
(株式会社AZ COO/マネージングディレクター BABY JOB株式会社 事業戦略アドバイザリー)
大手メーカー、SIer、外資人材、外資コンサルティングファーム等を経て、2013年事業再生を主たる使命に、COOとして株式会社AZに入社。自社の再生、成長を推進しつつ、EC、SaaS、スタートアップを中心としたクライアント企業に対して事業戦略の視点からのDX支援を行っている。

BABY JOB 株式会社
「すべての人が子育てを楽しいと思える社会」を企業ビジョンとし、保育所おむつ定額サービス「手ぶら登園」(日本サブスクリプションビジネス大賞2020 グランプリ受賞)をはじめ、ウェブやテクノロジーを活用したサービスを展開。

fermata株式会社 Amina氏
株式会社大丸松坂屋百貨店 澤井 裕之氏、髙橋 知世氏
株式会社AZ 藤堂 ちどり氏