ものづくり

《講演録》中小企業こそ<和>ノベーション!~日本型イノベーション創出力と生産性を高めるヒント

2019.05.08

>>> 日本の強みである現場の顧客視点を活かして<和>ノベーションを推進しよう

こうした状況にどのように対応していけばよいのでしょうか。日本企業の強みは「現場が考え、部門の壁を越えて有志で結集して物事を進めていける」という点です。今うまくいっている企業ではこの強みがきちんと機能しています。そうした現場には「顧客の困りごとをどのようにすれば解消できるか考える」という行動原理が存在しています。さらには「図面を与えられてその指示通りに作ることはつまらない」とも考えています。

彼らは図面の指示通りに作ることをおろそかにしているのではありません。むしろ、きっちりと取り組むことで技術を鍛えつつ次の一手を進めているのです。このように日本企業が持つ本来の強みである、皆で作り上げていく現場力を活かして新たな価値を量産する取り組みが<和>ノベーションです。

<和>ノベーションには、<和(わ)>ノベーション、<話(わ)>ノベーション、<輪(わ)>ノベーションの3つの漢字の意味が含められています。<和>ノベーションは、日本の和もしくは足し算の和、両方の意味で使っていますが、日本の企業や個人が持っている潜在力(=ありもの)を見える化し、それらを組み合わせて未来を描くことを意味しています。

<話>ノベーションは、描いた未来を手に「たたき台を持ってきたから、議論しようよ」と外に出ていくことです。たとえ稚拙であってもたたき台があれば、話を聞いてもらいやすくなります。<輪>ノベーションは、未来志向で、想いや志を共にした仲間が集まり、異なるさまざまな能力をつないで拡張していくことです。こうした取り組みにより、より多様なもの、より魅力的なものを生み出せるようになります。

<和>ノベーションのゴールを一言でいうと、創造生産性の向上です。創造生産性の式は「創り出した価値 ÷ 掛けた時間」です。分子は、新しい価値の総和で、それぞれの新しい価値にお客さんが支払った対価の合計です。分母は、掛けたリソースの総和で、価値を生み出すのに掛けた人、機械、AIの時間やコストの合計です。

一般的には、生産性は同じ価値を作るのにどれだけ時間を短くできるかといった効率化の意味合いで用いられることが多いですが、そうではなく、分母の「掛けた時間」のことはいったん忘れて、分子の「作り出した価値」を2倍・3倍にしていくことに私たちは主眼を置いています。

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株式会社ローランド・ベルガー

代表取締役社長

長島 聡氏

https://www.rolandberger.com/ja/