《講演録》日本レーザー近藤会長の経営哲学~崖っぷち会社を復活させた覚悟とノウハウ
《講演録》2019年8月9日(金)開催
【トークライブ!】日本レーザー近藤会長の経営哲学
〜崖っぷち会社を復活させた覚悟とノウハウ
近藤 宣之氏(株式会社日本レーザー 代表取締役会長)
赤字続きで銀行にも見放され、倒産寸前の「崖っぷち会社」。再建を命じられた近藤宣之氏が、一人も解雇することなく25年連続黒字に導いたのは、人を大切にし、社員一人ひとりの当事者意識を育ててきたから。売り上げや顧客満足に直接つながる社員自身のやりがいや喜び。それらを生み出す仕組みや環境作りについて語った。
▶倒産寸前、崖っぷち会社の社長に就任!
1944年生まれの75歳で、現役のCEOを元気にやらせていただいております。もともとは、1968年に日本電子という上場企業に入社しまして、同じ年に100%子会社として誕生したのが日本レーザーです。
私が50歳で日本電子の最年少役員から日本レーザーに出向し、社長に就任した1994年には破綻寸前の状態でした。3年連続の赤字で債務超過、借金は6.5億円。不良債権、不良在庫、不良設備が揃い、メインバンクからは親会社が借入金を保証しても新規融資はできないと通達されていました。
30数人いた従業員を守り、会社を再建するために、資本金の10%に当たる300万円分の株式を自ら購入し、親会社から1億円の借金をして1年後には日本電子の取締役を退任。骨を埋める覚悟で日本レーザーの社長としてスタートを切ったのです。
役員の一人が造反し、取引先の半分を失う逆境でのスタートとなりましたが、利益を削って不良債権の除却に取り組み、1年目で黒字化し、2年目に配当を復活。それから25年、連続黒字で配当を続けています。
現在、年商40億円、従業員は70名近くになりました。
ダメな会社というものは、たいてい「他責」で考えています。
当時、日本レーザーも、3年連続赤字になったのはバブル崩壊のせいだと言っていました。だから、まずは「自己責任」の風土を作ることに尽力しました。難しいことですが、最も大切なことだと思っています。
同時に、人も大切にしてきました。倒産寸前の状態でも一人も解雇はしていません。業績が悪い時こそ、社員を大切にすることで乗り切って来ました。
ビジネスモデル自体は過酷です。レーザーを中心とした光関連機器を扱う専門商社で、99%が輸入。14カ国100社以上との取引があり、1~3年の間に年商で15億円の差が出るほど、受注・売上げの増減が激しい。為替変動による急速なコストアップや、M&Aで突然商権を失うという経験も数多くありますが、雇用をカットすることはありませんでした。
経費や人件費の切り詰めには限界があるので、新製品導入と同時に、値上げもしてきました。中小企業こそ理論武装して戦うことが必要です。
これは業種にかかわりませんが、今の仕事を続けていたら将来食べていけなくなるという危機感を持ち続けて、新たなマーケットを開拓するのは社長の責務だと思います。私自身、従来の研究開発用だけでなく医療分野に進出するなど、積極的に動いています。
もちろん、社長が全ての顧客と会うわけにはいきませんので、どんどんスタッフに権限を委譲。「業績に貢献したい」という意欲を引き出し、たとえ損をしても責めることはせず、挑戦を後押ししています。
有能な社員ほど独立していくものですが、残る社員に日頃から会社に大切にされているという意識があれば、いざ修羅場になった時に「馬鹿力」を発揮してくれます。
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