《講演録》製造業の組織改革~実践企業が語る士気を高める戦略とは~【1】
《講演録》2021年10月14日(木)開催
【ものづくり向上委員会】
製造業の組織改革~実践企業が語る士気を高める戦略とは~
「業務の属人化」「経営層と現場で意思疎通が取れていない」などの組織課題に対し、製造業ではどのような対策がなされているのか。今回の講演では、上司からの支援、組織風土、制度待遇など60以上の項目を徹底分析し、製造業に合わせた対処法を紹介する。続いて、実際に組織を変革した中小製造業2社の経営者に経験談を語ってもらった。
◆国内最大データと事例から紐解く 組織・社員の活性化!
~従業員エンゲージメント向上に向けて経営者が取り組むべきこと~
大澤 雷大氏(株式会社リンクアンドモチベーション VWESTカンパニー カンパニー長)
◉製造業を取り巻く環境の変化
私たち企業は三つの市場から選ばれる宿命にあります。一つ目は商品やサービスを通じて顧客を奪い合う「商品市場」。二つ目は金融機関や投資家からお金を調達する「資本市場」です。最後は「労働市場」、人材つまり人を奪い合う市場です。
この数十年を見ると、特に製造業においてこの三つの市場のバランスに変化が起こっています。商品市場においては、情報化やIT化、さらに市場のニーズの変化といった流れの中で、ヒット商品の寿命が短命になってきているということがデータから読み取れます。
資本市場では、昨年8月に米国証券取引委員会が上場企業に対して「人的資本の情報開示」を義務づけると発表しました。これに関連し、売上や業績といった短期的な項目だけでなく、SDGsへの取り組みや組織や人材といった長期的な視点が注目されるようになってきました。
労働市場においては、労働人口における高齢化が進む一方で、若年就業者の割合が減っています。併せて、働き方改革や直近の新型コロナウイルスによるリモートワークや情報セキュリティ、最近流行りのキーワードではジョブ型雇用といったさまざまな環境の変化によって、人や組織のマネジメントに求められることが増大し、複雑化しています。
◉エンゲージメントとは?
こうしたマクロ的な流れの中で、「従業員エンゲージメント」がキーワードになってきています。従業員エンゲージメントとは、企業と従業員の相互理解や相思相愛の度合いを表すものです。
このエンゲージメントを構成する要素として、Philosophy(目標の魅力)、Profession(活動の魅力)、People(組織の魅力)、Privilege(待遇の魅力)の四つがあります。
このすべてがそろっている企業はありません。従業員と限られた資源の中で、「何によって従業員と企業を束ねるか」「何によって”この指止まれ”をつくるか」がエンゲージメント向上に向けた最重要テーマです。
「従業員満足度」や「ロイヤリティー」が企業と従業員の主従といった縦の関係が強いのに対し、「エンゲージメント」は横の関係です。「エンゲージメント」は、企業と従業員がお互いに選び合う関係であるという前提のもと、先ほどの四つの要素に対して、従業員が何を期待していて、企業がそれを提供できているのかを大事にします。
◉製造業で起こりやすい組織課題
創業以来蓄積してきたデータベースから、従業員の主体性を阻みがちな項目について、事例や対応を紹介します。
モチベーションクラウドでは、エンゲージメント状態を「会社」「上司・職場」に分け、それぞれの項目における期待度と満足度によって診断します。期待度が高く、かつ満足度が低くなりがちな項目に組織課題があり、製造業で低下しがちな項目は大きく3つあります。