全国の家庭に手芸用品を届けるため 特約店制度を設けて独自の販売網を確立
“クロバー”は非常に繁殖力が強く、汽車で運ばれる荷物に付着した種子が風に運ばれ、線路伝いに全国に広まったと言われている。「クロバーのように日本全国のご家庭に手芸用品を届けたい。この創業者の思いが社名の由来です」とディレクターの古谷氏は説明する。
1925年に手芸用品の問屋業として創業。粗悪な商品が市場に出回る状況を憂いた創業者が、品質向上のために規格化した製品を開発する必要を感じ、昭和20年頃にメーカーに転身した。レース針の製造からスタートし、その後「針」に徹底的にこだわるようになる。「手づくりの基本道具である針の種類は、大別するとぬい針、かぎ針、あみ針の3種。当社独自の規格を設け、日本人の手に合う高品質の針を次々と生み出し、クロバーブランドを確立していきました」。その後手芸用品全般へと商品開発を続け、現在は5800ものアイテムを扱う。
「全国の家庭に手芸用品を…」という創業者の思いを具現化するため、特約店、代理店制度を設けて独自ルートの販売網を開拓。今では、手芸店を中心に大手総合スーパー、ホームセンターなど全国約1万2千の取扱店舗を抱えるまでになった。さらに現地法人のあるアメリカをはじめ、ヨーロッパ各国にも展開している。
高品質の製品で市場を開拓してきたが、1984年をピークに手芸人口が減少し始める。「もはや高品質を謳うだけでは売上拡大は見込めない」と考え、手編みの盛んなアメリカを視察したところ、道行く人に編み物の楽しさを伝えるニットイベントが盛んに行われていることを知った。そこで2004年に六本木ヒルズでニットイベントを開催したところ、告知なしで6千人を動員するなど大盛況だったという。
2006年には編み物が楽しめるニットカフェもオープン。カフェで気軽におしゃべりをしながら編み物を教え合う拠点が全国に広がりつつある。「こうした普及活動に力を入れるのは、創業者の思いが根底にある」と同氏。もう一度〝クロバー〟を全国のご家庭に届けるべく新商品開発とともに草の根運動にも力を入れる。
▲クロバーならではの高品質なイメージを打ち出したブランド展開を行う。独自のダ円穴と純金メッキ仕上げが特徴のぬい針は「絆ブランド」として、純国産の竹を使用したあみ針や棒針は「匠ブランド」として国内外で高い評価を得る。
▲誰でも手軽に帽子やバッグが編めるテンプレートセットも手掛けるなど、初心者でも扱いやすい商品開発を行う。ニットカフェも含め、編み物の楽しさを普及するのが狙い。
▲ニットイベント「ニットアウト」の様子。