圧倒的な商品力を武器に強気の出店攻勢 持ち前のベンチャースピリットで世界に進出
あの甘い香りが漂うお店を素通りできる人が果たして何人いるだろうか。黄色い看板とヒゲのおじいさんでお馴染みのシュークリーム専門店「ビアードパパ」。運営するのは、大阪に本社を置く麦の穂。日本国内に160店、海外に217店を展開するグローバル企業として急成長を遂げている。
1997年にパン屋として創業したが、扱う商品数が多くて経営資源が分散し、ロスが多いのが課題だった。「そこで当時流行り始めていたシュークリームに特化し、“できたて、作りたて”をコンセプトに展開することにしたのです」と営業推進室の木島室長。
テナントの入居条件の関係で福岡に1号店をオープンし、その3年後には年間150店の出店を計画するまでに。「それほど出店を急いだ理由は、他社よりも先に全国の拠点を抑えるため。店を出すたびに長蛇の列ができるほど売上げが堅調だったことも、強気の出店戦略に弾みをつけた」という。
では、なぜ「ビアードパパ」はここまで人気を集めるのだろうか。それはズバリ、商品力だ。材料のこだわりはもちろん、その場でクリームを詰める実演販売スタイルで表面はサックリ、中はしっとりもちもちとした食感を実現。「コンビニがつくる商品と同じコンセプトで勝負しても負ける。コンビニでは買えない“できたて、作りたて”の商品にこだわっています」。
積極的な出店戦略の根底には、同社のベンチャースピリットが息づいている。創業時から一定の売上げが見込める市場に新商品を次々と投入し、採算が合わなくなれば速やかに撤退するトライ&エラーを重ねてきた。この迅速な経営判断とチャレンジ精神こそ、「ビアードパパ」を短期間で世界的なブランドに成長させた秘訣だろう。
現在、力を入れているのは海外展開。「縮小する国内市場より、台頭するアジア新興国を含めて海外のほうが圧倒的にポテンシャルが高い」と経営管理本部長の中沢氏は語る。シュー生地は日本の工場から輸出し、クリームは現地で生産。オープン前には日本のスタッフが現地に飛び、クリームの味を厳密に調整するという。
ヒゲのおじいさんをさらに世界に広めるべく、今後は中国、タイ、韓国、アメリカなどへの出店を加速する考えだ。
▲オープン当初は半分の商品を捨てるほどの試行錯誤を重ね、「ビアードパパ」のシュークリームが完成したという。1号店のオープン以後、出店する店はすべて長蛇の列ができた。
▲世界17カ国217店舗で展開中。今後も世界50カ国に出店をめざしている。
▲年間150店の出店計画を支えたのは、2001年に大阪市西淀川区に設立した大阪工場。大量生産が可能となり、急速な全国展開を後押しした。また「ビアードパパ」以外にも、焼きドーナツ専門店やうどん・串カツ店など9ブランドを展開する。
▲営業推進室 室長 木島 信広氏(右) / 経営管理本部長 兼 海外事業本部長 中沢 徹氏(左)