【SPECIAL INTERVIEW】 未来の日本にのこしたい「いい会社」に投資する、新しい金融のカタチ
事業化に立ちはだかった資金調達と知名度の壁
鎌倉投信の立ち上げ時に苦労したのは、事業を開始するための資金を調達することと知名度を上げることでした。公募型の投資信託を設定・運用する投信委託業やその販売に係る金融商品取引業は、金融取引のなかで最も規制が厳しい分野の1つです。運用管理に関わる人的要件やシステム要件に非常にお金がかかるため資金調達が必須ですが、事業のめどがたたないうちから、実質的に最低必要とされる億単位の資金を銀行が簡単に貸してくれるわけがありません。
商品の知名度についても、きちんと自分たちの想いや方針を伝えていくために、100%直接販売・顔の見える運用に特化しました。自社のホームページ以外の広告宣伝は一切せず、説明会を年間100回くらい開き、ホームページで告知して、お客様に来てもらうという地道な方法です。でも「鎌倉投信いいんじゃないの」と思ったお客様がSNSなどで広めてくださり、いつしか雑誌やテレビの取材が入るようになりました。つまり、すべて口コミの連鎖、つながりだったのです。
さらに、投資信託を設定し運用開始してほどなくギリシャ危機や東日本大震災が起こります。いろんなことが思い通りに進まないなか、私たちが大事にしたのは、「自分たちが当初やろうとしたことから絶対ぶれない」ことでした。苦しいからと安易なほうに動き、営業活動の支援を求めて金融機関と提携すれば、鎌倉投信の本質的なよさがなくなってしまう。どれだけ歯をくいしばるかでした。
社会課題を軸に、特色ある会社を選ぶ
私たちが「結い 2101」の投資先を選ぶ際に、大前提とするのは、「これからの日本に本当に必要とされる会社」か、という点です。日本はものとサービスにあふれる一方で、多くの社会課題を抱えた国です。社会課題を軸に何かで突出した会社を投資先として選んでいます。つまり、社会課題を解決したり、社会価値を創造したり、社会の質を高めたりすることで経済の発展に寄与する会社。つまり社会性と事業性(または経済性)を併せ持つ会社です。
また、「いい会社」を選ぶ際には、「人(人財を生かせる会社)」「共生(循環型社会を創造する会社)」「匠(日本の匠の技術・感動的なサービスを提供する会社)」の3区分にわけます。
「人」でいうと、これからの日本にとって人財の多様性が重要になってきます。だからいろんな人の能力が発揮できる会社をふやしたい。その一例が、障碍者雇用。障碍者一人ひとりがもつ個性を活かして、会社の利益につなげられる会社はどこだろうと探すのです。
でも、障碍者雇用や育児休暇などの制度や仕組みがあっても、中身が問題なのです。「育休取得率〇パーセントの会社です」と打出してるけど、社員の表情を見ると幸せそうに働いていない、とか。制度のあるなしや数値目標の達成状況などは問題ではありません。逆に数値によって、会社の実情を見えなくしているケースも多いと思います。だから私たちは現場に行く。自分たちの目で観て、本当にいい会社かどうか見極めているんです。
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