【SPECIAL INTERVIEW】 未来の日本にのこしたい「いい会社」に投資する、新しい金融のカタチ
投資家と共有するのは「どんな会社を未来の日本に残したいか」
現場に足を運び確認するのは、その会社の無形資産、企業風土、社員の働き方や表情、社長の資質や地域との関係性などです。財務諸表ではわからない項目ばかり。
鎌倉投信では「いい会社」かどうかを見極めるための約35の指標がありますが、すべての項目の平均点より、その会社の強さは何かという視点を大切にします。鎌倉投信は「結い 2101」を通じて現在60社(平成28年9月末現在)に投資しています。1社1社は何かに突出して、何かが欠けていた会社だとしても、60社を合計すると、全体としては結果的にバランスがよくなる組み合わせになっています。バランスのいい会社ばかり選ぶと、逆に特徴のない会社に偏ったり、大企業ばかりになったりするのです。
さらに、現時点の1万6千人の投資家の方々が鎌倉投信の考え方に納得して、応援していただけるかが重要です。だから、投資家の皆さんも投資先の会社にお連れします。そこで、その会社の可能性を感じていただく。手間も時間もかかりますが、利益性だけでは共感軸にならない。「この会社を残したい」という目的を共有することで、「結い」を長く保有していただく方が多いのも、ほかの金融商品との違いかもしれません。
これからは地方のベンチャー企業の時代
現在の投資先は約60社。事業性と社会性の評価は上場・非上場を問いませんが、非上場会社の場合は、幾分社会性に軸足を置いているかもしれません。「応援して、これからの日本に残さなくてはならない」と思う会社には、事業としてはまだ十分に確立していなくても、社会性の軸で投資に踏み切ることはあります。
そのときに大事なのは、最終投資家であるお客様が大きなリスクを負ってはいけないということ。ですから、非上場の会社への投資割合はファンド全体の5%以内というルールを決めています。投資先の大部分が比較的安定した上場会社だから、そういう運用もできるのです。
ただし、非上場会社の場合は開示情報が少ないので、現場に足を運ぶ機会は上場企業に比べて頻度が高くなります。いいものをつくっていても、知名度が低いためにマーケットをもっていない会社も多い。その場合は、販路になりそうな大企業を紹介するなど、さまざまな可能性を模索しています。逆に、大きな会社には事業性はあるが社会性に課題をもっている。鎌倉投信が、両社をつなげるのです。
鎌倉投信の投資先にはものづくりに秀でた関西の会社もあります。関西はあらゆる産業分野の超一流のものづくりの基礎技術が集積している珍しい地域です。情報やお金に地域の境界はありません。物理的にはどこでも仕事ができる。投資する側にすれば、会社がどこにあるかは全く関係ない。むしろ離島のベンチャーということが強みになることもあります。これからは地方の可能性が拓かれる時代です。地方に「いい会社」がふえていくことが日本の未来につながると思います。
(取材/山野千枝・文/花谷知子)