起業家精神が日本を変える ~世界で勝つ経営戦略を創り出せ!~
【第四部】
目次
伸びている分野を見つけたらすぐに乗り移る
本田 加藤さんはどうですか。ワクワクしてることは。
加藤 雑誌広告からインターネット広告に移ったときに、その理由っていうのが革命が来ると思ったのと同時に、こっちに行ったら面白い人がたくさんいそうやと思ったんですね。面白そうなところに面白い人は集まるわけです。人間って環境の生き物なんで、今日ここにおられる人はこの土曜日のね、週末で、こんな家族ほったらかしにしてここにいるだけで異常者ですよね(笑)。でも、異常なところにいないと異常になれない。やっぱり環境にやっぱり生かされているから。僕はパッションのありそうなところに自分で動いて行った。世の中で、今一番伸びてるところに、やっぱりみんな恋焦がれて来ますよね。そこには野心があったり、成長意欲のある人が勝手に集まっています。自分でパッションを作ろうというより、あっちにパッションがありそうだっていうところに行く方が早いですね。シンガポールにおるのもそういう理由で行ったわけです。それも世界中の人が「今東南アジアが熱い」って言ってる。パッションがある方に寄って行けばいいんです。
僕が今役員やってるKLabって会社があるんです。ソーシャルゲームやっている会社で、一昨年9月に上場しました。去年の5月に東証の1部に鞍替えになりました。この会社は出来て12年経っています。つまり10年間ぼちぼちやったんです。それが一昨年、ソーシャルゲームがいけるってことで事業を乗り替えたんです。なぜかというとソーシャルゲームがパッションやと思ったわけです。ずっと組み込みアプリの制作会社だったわけですが、こっちが熱いと思って、100人くらい従業員がおったのですが、その仕事を受注するのを突然やめたんです。「受けてきた仕事はやらなきゃいけないけど、今の仕事は半年後はやってないよ。その代わり新規事業のソーシャルゲームをどんどん伸ばすで」ということで一気に2年間で従業員を600人にしました。世の中の多くの人はこれからソーシャルゲームがいけると気付いているんだけど、気付いても動けない人が99%なんです。
何が言いたいかと言うと、伸びてるところを見つけるのがものすごい大事なんです。成長ってのは皆さんが作るもんじゃなくて、成長してるところがあるんです。波に乗れてよかったですねってよく言われるんですけど、違うんです。自分の意思で波に乗りに行ってるんです。皆さん「うちの産業はうだつが上がらなくて」と言ってる人は、うだつが上がらん所におるのは自分の意志やということなんです。だからイケてる産業を見つけて自分でパッとパッションを持って乗り移る。今僕いろんな会社に関わってるんですけれど、経営者のほとんどはまぁ普通の人たちですよ。精神は異常ですけど(笑)。みんな同じ人間ですからね。ただ何が違うかって言ったら、要するにパッと移れる行動力なんです。
本田 洞察力、観察力やね。ちょっとわかりやすい話をしましょうか。大阪の福島に2軒出している焼肉屋さんがあるのですが、3軒目をつくったのはホーチミンです。4軒目がプノンペンで、5軒目はもう一つホーチミンに出しました。僕が聞いたところによると、大阪の客単価が3500円でホーチミンは3000円いかんかなってとこでした。ホーチミンの家賃・地代と人件費考えたら、それで2500~3000円ということは、商いと言う視点で見たときに、よっぽど向こうの方が儲けているわけです。つまり知ることっていうのはすごく大事なんです。で知ったら次はどうしたらええかって言うと、今ここが一番のポイントなんですけれども、そこにどれだけ早く行くかです。知っていることは、誰にでもできることで、情報の取り方だってこういうネットワークつくっていけばいくらでもできる。ただそこにどれだけ早くコミットするか、近づけるかっちゅうことが実はパッションになってくると思うんです。
価値を高く評価してくれるところで戦え
質問 海外の市場に進出することを考えているんですが、どこでも同じなのでしょうか。やっぱり国民性で差はあるのでしょうか。
加藤 例えば、今でいうとフィリピンとかもむっちゃ伸びてるんです。去年1年間で証券取引所の平均株価が30数回、最高値を更新しました。世界中から今お金が集まってるんで、いわゆるバブルのような状況になってるんです。そうするといろいろ需要が増えて供給が足りないので、いちいちすべて脇が甘くなるので、そういう脇の甘いところが、一番商売が楽に立ち上がると思いますね。僕がアジア、アジアと言っているのは、アジアが脇が甘いからです。それは成長しすぎて、需要と供給のバランスが合ってないからですね。ただまあ、いきなりフィリピンに行くのは反対です。ただ、伸びてる国にぶら下がるのは良いと思いますね。ただみんなが伸びてるわけじゃないんでね。台湾とかもずーっと成長止まってますから。需要があって供給があるところの、合計を埋めにいくのが、ベンチャーにとっては一番楽やということです。需要創造型よりも、すでに需要があるところを見つける方が、名もなき実績もなき資本も少ないベンチャーは楽やと思います。
徳重 付け加えると、ポジショニングというか、自分の会社をどこに置くかっていうことですね。例えば僕たちの事例でいうと、僕たちの会社の価値が100として、日本の場合どうしても新しい市場だとか、大手企業はガソリンパイプやってたりするから、人によっては会社の価値が30くらいになる。100あるのに実際には30にしか見られない。ところが、同じ会社を、東南アジアや台湾に持っていくと300ぐらいになるんです。つまり、同じものなんだけど、どこに置くかによって評価が変わる。一つは日本の会社であるというメリットをもっとうまく使えばいいんじゃないかなとも思いますし。あとはベンチャー企業だからこそベンチャー国でやるべきなんじゃないかと。要は肌が合うわけですよね。ベンチャー国というのは近場でいうと東南アジアですね。ベトナム、カンボジア、インドネシアあたりです。
本田 徳重さんが言っているようにアジア人の視点で見ることがすごく大事。その視点で見たときに、マーケットとか、自分の役割や自分の国民性、アイデンティティっていうのはむしろすごくフォーカスしやすい。自分らしくどう生かせるかということがとらえやすい。アジアっていうマーケットは「僕らアジア人やんな」っていう視点で見た方がいいんちゃうかと思う。では次の質問。
質問 加藤さんは、とにかく伸びる産業にいち早く気付くことが大事だというお話でしたが、加藤さんから見た『今伸びている産業』は何ですか。
加藤 僕は今東南アジア全体が伸びていると思っていて。東南アジアの内需にフォーカスすると、僕はなんでもありやと思ってます。ただ、わかっておかなければいけないのは、日本人は外人なんですね。外人なんで、外人がやっちゃいけない商売っていうのが結構たくさんあるわけです。特に資本規制のことは勉強されたほうがいいと思います。僕はシンガポールに今、持株会社をつくってアジアに投資会社をつくりましょうっていうことをいろんな企業に提案してますが、シンガポールは世界でも例外的に、外国人が持株会社や事業統括会社を置きやすい国になってるんです。だから、まずシンガポールに前線基地をつくってですね、そこにお金を集めたり人を集めたりして、近隣諸国で事業活動をしていく。国によってはフィリピンとかベトナム、タイのように過半数の資本が持てない、役員も半分以上現地の人にしなきゃいけない、あるいはやっちゃいけない商売がベトナムとかインドネシアにいっぱいあるんです。逆にいうとシンガポールは、一部のインフラ産業を除いて外国人100%でも、従業員・役員全員日本人でも別に問題はない。
一番良いと言えるところは今は特にないですね。それよりも成熟産業であろうがなんだろうが、さっきも言いましたように、めちゃくちゃに伸びる方法を考えることですね。あるいはめちゃくちゃに伸びるものを見つけるということが大事やと思います。