産創館トピックス/講演録

≪講演録≫起業家サポートDay!基調講演 ボーネルンド

2017.06.15

《講演録》 2017年5月26日(金)開催
起業家サポートDay! 基調講演
〜こどもの「あそび」ビジネスのパイオニア〜「あそび」を変えたボーネルンドは「未来」を変える
株式会社ボーネルンド 代表取締役社長 中西 弘子 氏

世界のあそび道具の販売をはじめ、グランフロント大阪の「キドキド」、天王寺公園の「プレイヴィル」など、親子で楽しめる「あそび場」を全国に展開しているボーネルンド。あそびを通して、現代の子育て事情や社会課題の解決策を提供する、あそびビジネスのパイオニアだ。創業者である中西弘子社長が、40年間の苦楽などを語った。

日本の子どもたちに、新しいあそび文化を

大阪で事業を営む家に生まれ、両親の苦労を見て育った私は、「安定した収入のあるサラリーマンと結婚する」と心に決めていました。その願いが叶い、商社マンの妻として2人の子どもの育児と家事に専念する日々を送っていたところ、突然、夫が会社を辞めて起業すると言い出したのです。

ヨーロッパ諸国を頻繁に行き来していた商社マン時代の夫は、特に北欧の、子どもの成長を考え抜いたあそび環境を見て、「日本にも子どもの新しいあそび文化が必要だ」という思いを強く抱いていました。

例えば、人口が550万人と少なく、国土も狭いデンマークのような福祉国家にとっては、人が一番の財産。自立した大人に育つためには、子ども時代によく遊ぶことが大切だと考えられ、子どもの成長に役立つ遊具や玩具がつくられています。

夫の考えに賛同し、起業に関わる覚悟をした私は、北欧をはじめとするヨーロッパ諸国を見て歩きました。そこにあったのは、駅や空港、病院、学校、銀行、役所など至るところに子どもがあそべる場所がある環境。日本はというと、高度成長期で大人たちは忙しく、商業的都合の大人目線でつくられた玩具は、売れるもの=良いものという時代でした。

「日本の将来のために、子どもを取り巻く環境やあそび道具を変えなければならない」という強い使命感が私に生まれたことを、いまでもはっきりと覚えています。1981年、夫とともにボーネルンドを起業しました。

「あそびこそが教育につながる」というフィロソフィー

起業にあたり、私たちがまず行ったことは会社の目的をはっきりさせること。「あそびを通して、子どもの健やかな成長に寄与する」を企業理念に定め、デンマーク語で子どもを意味する「børne(ボーネ)」と、森を意味する「lund(ルンド)」をつなげた「ボーネルンド」を社名にしました。ロゴの色はスウェーデンの国旗の色です。

よく、「海外の企業ですよね」と言われますが、純粋な日本企業です。社名やロゴは狙い通りに働き、これまでの日本の玩具や遊具の考え方と異なる、「新たな価値を提供する企業」だと印象づけることができました。

また、私たちは「あそびこそが教育につながる」というフィロソフィーをもっています。人間は乳幼児期の体験によって、人格の基礎や知性、情操、社会性を獲得するといわれています。意欲的に楽しんで多様な体験をする「あそび」に、乳幼児期の子どもが深く関わることで、人生を送るための知恵や知識が得られると私たちは考えます。

日本初の色彩豊かな大型遊具の輸入販売と直営店の展開

「あそびを通して、子どもの健やかな成長に寄与する」ために最初に行ったのが、デンマークにあるコンパン社の大型遊具の輸入販売でした。日本の公園や幼稚園に、赤や黄や青の美しくはっきりとした色使いの大型遊具を最初に導入したのは私たちです。コンパン社の創業者とはヨーロッパ訪問中に意気投合し、信頼関係を築いていました。

私たちのあそびに対する考え方や、子どもの発達ニーズに応えるコンパンの遊具に共感する人々が徐々に増え、販売代理店もできて順調に売上げを伸ばしました。つぎに、三輪車やシャベルなども欲しいという要望が出てきたので、世界の優れた玩具の輸入販売を始めます。

ボーネルンドが提供する玩具は、子どもが主役になって使いこなすことができる「あそびの道具」。玩具の木琴であっても正確に調律をしています。現在、全国89カ所にあるボーネルンドショップでは、インストラクターがお客さまと対話をし、その場で商品を試し、納得してからご購入いただく、という手法をとっています。

創業から最初の20年間は、「大型遊具の輸入販売」と「教育玩具の輸入・開発・販売」の2領域で事業を行いました。

株式会社ボーネルンド 

代表取締役社長

中西 弘子氏

https://www.bornelund.co.jp/