起業家精神が日本を変える ~世界で勝つ経営戦略を創り出せ!~
【第二部】
目次
ビジョンに人は集まってくる
本田 ここで会場の皆さんから質問を受け付けます。
質問 会社を立ち上げてスタートした時にどうやってチームをつくっていったのか、いろいろ苦労があったと思うんですけど。
徳重 我々まだ社員15名でして、これからもっとスーパーな人材を集めて進化していかなければいけないのですが、発展途上という前提でお話します。最初は一人で立ち上げて、電動バイクメーカーなので、生産、開発、物流、販売、プロモーション、メンテとかめちゃくちゃあるわけですよね。僕がやりたかったことは、日本から急成長するメガベンチャーをつくりたいと。それが僕のやりたいことでね。そのためには、ビジョンと人と資金なんです。それもスーパーだということです。結局大変なのは人なんですね。人材会社にお願いすると150万円くらいかかるし、雇用しても結果的に良いか悪いかもわからない。それでハローワークにオーダーするんですけど、まぁなかなかいい人材が来ないわけです。困っていたところ、スローガンという、優秀な大学生をベンチャーに送る会社があって、そこの伊藤豊さんという社長に僕がめざしている志やビジョンを伝えたら、是非2人紹介したいと。早稲田大学の4年生と、もう1人は早稲田の理工学部出身の社会人2、3年目ぐらいの人で。その2人がリスクをとって入ってきたわけです。後で聞いたら、僕の考えてるビジョンが面白くてワクワク感があるということと、僕が本気で言ってたということがポイントだったようです。それで彼らにどんどん仕事を与えて、どんどん叱って、どんどん成長するっていうスパイラルが始まりました。うちのやり方は基本的にはインターンから入れて、ガリガリグリグリ徹底的に鍛えるんです。何でビジョンが大切かというと、僕はベンチャーが急成長するパターンをつくらなきゃいけないという信念をもっている。それが一番なんです。その上、EV(電気自動車)なんで、世界にイノベーションを起こそうとか、シリコンバレーの奴らを驚かせたいとかね。あとはアジアのリーダーを輩出する。それが柱なんですけれど、そういうのが響いた人が来てる。そういう意味ではビジョンは重要です。
加藤 僕はチームをつくりたい人たちを見つけてどんな商売をしたいのとか、どんな夢があるの、とか聞きながら、共鳴できて、向こうも望んでくれて、僕が何かアイデアが浮かんだら、チームをつくっています。そこに資本を入れて役員になるという手法です。みな僕より下で、社長さんは若い子で27歳ぐらい、一番年上で36歳ぐらいですかね。今僕が関わっている会社は7、8社あって、皆オーナー社長です。でどうやったら資本が増やせるの、チームをつくれるの、事業戦略を立てられるの、というのを僕の方がちょっと知ってるので一緒になって考えています。
本田 そういう加藤さんにとってチームとは。
加藤 徳重さんと同じなんですけど、結局ビジョンなんです。日広という会社を設立した当初は、夢も野望もビジョンもなく、単に儲かるからといって雑誌の広告の仕事をしていたんです。だからその頃はチームを作ろうなんて思ってなかったですね。ところが95年にうちのお客さんが、ダイヤルQ2のプロバイダーを始めたんです。「これからは日本中インターネットで世の中のモノ、コト、金の流れ変わるぞ」って言われて、もう脳みそが耳から出るくらいびっくりしたんですよ。もともとリョーマを興した時も会社で世の中に革命を起こそうと思っていたことが蘇って。98年に「インターネット広告で世界一になる」というビジョンを突然掲げたんです。そしたらバイトが半分以上辞めました。急に社長がおかしくなったと(笑)。その中で1人、2人だけが残ったんです。「社長の言うてる革命って面白い」と。それで、僕にとって単なるバイトだった人間が「人材」に見えてきたんです。「俺の言ってることわかってるな、こいつ」って。それから毎週勉強会やって、「インターネット広告は世の中を変える革命になる」、「閉鎖的な広告業界が劇的に変わる可能性がある」、という話をしてました。それから従業員も売上げも増えて、一番多い時で2006年に103億円までいきました。従業員は単体で147人、連結で200人まで増えました。なぜ増えたかというと、インターネットが世の中を変えるというビジョンです。「世の中を変える力がインターネットにはある」っていう僕の主張がある意味追い風を掴んだんやって思っています。
それまでやっていた雑誌広告の産業って成熟産業だったんです。雑誌広告っていうのは結局大手の広告代理店や雑誌社の作ったルールの中でやって行かないとだめで、僕らのような完全なフォロワーは絶対上へ上がれない。既成の産業に後発で参入しても絶対にルールメーカーにはなれないんだと。だから成長のビジョンを社員に説明できなかった。僕1人で責任のとれる範囲で小さくやってればいいと思ってたんです。ところがインターネット広告の時代がやってきて、「インターネット広告って全然わからんけど、ルールメーカーになれる可能性がある、ルールメーカーになれれば何の制限もない」と。だからビジョンが語れたんですね。
1から100にするより、0から1にするのが大変
本田 徳重さんは社員15人っておっしゃってました。これからチームとして同志として増やしていくつもりですか。
徳重 当然増やしていかないといけません。今やっと0から1にできた状況で、これから1から100にしていくんですが、0から1にする方が大変なんです。0から1をつくってはじめて製品もイノベイティブなものが今年できるわけです。有難いことに一流企業で働いているスーパーな連中の中にも、年収が半分になってもいいっていう奴らが本当に入社してくれるようになってきました。
あと先程のビジョンの話ですが、経営者が本気で思ってるかどうかってことが極めて重要なんです。公明正大とか社会貢献とか経営者が本当に思っていて、自らの経験に裏付けられた信念をもとにビジョンが昇華されなければ意味がない。というか、新入社員って1~2カ月働いたら経営者が本気かどうかわかるので、そこは非常に重要なんです。
あともう1つ付け加えていうと、「私には崇高なビジョンなんかないです」とか言う人も多いと思うんですね。たとえば、松下幸之助のビジョンは水道哲学です。でも水道哲学って最初からあったわけじゃなくて、経営者として進化を遂げながら9年くらい経ってから水道哲学をつくったんです。だから今ないからダメだってわけじゃなく、考え続けることが大事なんじゃないでしょうか。
本田 要はビジョンをしっかり持っていて、それを本気で思っているという信念があって、さらにアウトプットして声高に伝えていく。そうすると、おのずとそれに共鳴できる人、共感できる人が集まってくる。自分はこういう信念持っているんだと明確に言うてないとアカンし、それほんまに俺思っているかなっていう確認をしながら前へ進んでいく。その結果、同志が集まってくるし、同志になりきれない人は去るということですね。でも同志だって言っていても全くフラットで水平かというと、そのチームの作り方っていうと叱りながら怒りながら鍛えていくっていうやり方もあれば、どんどんヒアリングを重ねてそれにアイデアを重ねていくというチームもありで、それに要はそれぞれのプレイヤーの違いがあるわけです。