産創館トピックス/講演録

《講演録》正解のない時代を突破する「挑戦する経営チーム」のつくり方

2020.12.01

♦共感力を生かすためには経営幹部がまずは当事者になる

企業の中で共感力を発揮していくためには、まずは経営幹部自体が変わらないといけません。ある程度の歳を重ねると変わらないことが立派だと勘違いしている方も多いですが、生物は進化することでしか生き残っていけません。

大きく変容して成功した組織のトップが「一番変わらないといけなかったのは実は自分だった」と語るのを何回も耳にしてきました。

 
経営幹部自体が社長と思いを共有し、周囲に伝えていくことが重要です。社長と思いを共有する、というのは社長のいうことをあいまいな理解のまま自分なりに解釈することではありません。
不確かな点があれば「それはどういう意味ですか」「もう一度説明お願いします」と問い返しを当たり前に実践していくのです。

そして、社長と経営幹部がそれぞれ1対1で話をするだけではなく、経営幹部同士が活発に議論できる状態にならなくてはいけません。
経営幹部同士が議論を通じて相互理解を深め、当事者としての自覚と連携のある強い経営チームとして機能していれば、周囲の社員に対しても説得力が生まれます。

社員だって馬鹿じゃありません。経営幹部が自分の立場からものをいっているのか、本気で会社のことを考えてものをいっているのかの区別くらいはつきます。

 
♦挑戦文化と調整文化の価値観の違い

最後に、調整文化と挑戦文化の価値観の違いをまとめておきます。

 
[1]仕事観・・・調整文化では人は与えられた役職や立場の中で懸命に働きますが、挑戦文化では、夢・志・思いを起点に仲間と共に働きます。

[2]ものごとの捉えかた・・・調整文化では失敗は許されず、問題はあってはならないものです。挑戦文化では人間は失敗する生き物であり、問題が起こった場合にはその事実を受け止め、どうしてそうなったのか・どうやったら防げるのかを議論します。

[3]自分の立ち位置・・・調整文化では評論家・傍観者ですが、挑戦文化では当事者です。めざすべきところに向かって「自分はこうやっている。だからあなたはこうしてほしい」と周囲に働きかけます。

[4]仕事への向き合い方・・・調整文化では降ってくる仕事をとにかくきちんとやります。挑戦文化では優先順位を意識して、2割の重要な仕事に8割の時間を充てます。捨てても構わない2割の仕事を見極め、残り6割の仕事をできるだけシンプルにこなします。

[5]意思決定のしかた・・・調整文化では合議で決まり、挑戦文化では担当者が意思決定します。このとき上の人間は自分がリスクを負えないようなことを下の人間に任せてはいけません。「責任は自分がとるから」と言えないようでは、変革ではなく改善レベルのことしかできません。

[6]評価される人間・・・調整文化では組織・上司に忠誠をもった人が評価されますが、挑戦文化では事実や自分と誠実に向き合いチャレンジしている人が評価されます。

 
この会場に来てくださっている経営者の方は、どうやったら自分の会社を変えていけるのかを真剣に考えている方々でしょう。今日のお話が考えるきっかけとなって、みなさんの会社の変革に役立つことを願っています。

 
(文/原きみこ)

 

 

柴田 昌治氏(株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表/創業者)
1979年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。大学院在学中にドイツ語学院を起業。その後、さらに教育学の知見を活かすべく、ビジネス教育の会社を設立。深く携わることで、当時はまだ言葉すらなかった「組織風土」と「働き方の改革」の必要性を痛感するようになる。1986年、日本企業の風土・体質改革を専門的に行うスコラ・コンサルトを設立。以来、「意味や目的、価値などを考えて仕事をする習慣創り」を仕事とし、社員が主体的に協力し合っていきいきと働き、経営と一体でめざすものに向かっていく「チーム経営」を実現すべく努力を続ける。30年以上にわたる改革の現場経験から結実させてきた「複雑であいまいに揺れ動く実態において、思考と行動の試行錯誤を繰り返しながら人と組織を進化させ、成長・持続する企業を実現するための方法論〈プロセスデザイン〉」は、全国の多くの企業の組織風土改革を実現に導いている。

株式会社スコラ・コンサルト

プロセスデザイナー代表/創業者

柴田 昌治氏

http://www.scholar.co.jp

事業内容/プロセスデザインによる企業風土改革コンサルティング