産創館トピックス/講演録

《講演録》職人育成の常識を塗り替えた!原田左官工業所の“人を育てる姿勢”

2019.03.25

《講演録》2019年2月22日(金)開催
【トークライブ!】職人育成の常識を塗り替えた!原田左官工業所の“人を育てる姿勢”

有限会社原田左官工業所 代表取締役社長 原田 宗亮氏

職人の高齢化や高い離職率による人材不足が大きな課題とされる建設業界で、原田左官工業所は入社4年以内の離職率4%と異例の水準を誇っている。女性職人の採用や「自社で人を育てる」取り組みで、若手もベテランも活躍できる体制を作り上げてきた原田氏がその経験を語った。

>>> 「3K職場」から女性、若手職人が多い会社へ

みなさんは左官業と聞くとどのようなイメージを持たれますか?建設業界全体に言えることですが「危険、汚い、キツイ」といういわゆる3Kということばを想像する方もいるかもしれません。

実際、30年ほど前までは職人さん自身「現場仕事は危険でキツくて汚れるものだ。だから多少がさつなのはしょうがない」と考えているところがありました。まして女性が活躍するような職場ではないというのが常識でした。

昔の職人さんにはそのようなタイプが多く、それはそれでパワフルではありました。しかし、職人自体が減っている今、さまざまなタイプの人を職人として育てていかなければ業界そのものがなくなってしまう。

そこで、縁があってうちに来た人たちをどう育てていくべきかを試行錯誤した結果、職人の平均年齢が60代以上のこの業界で、当社は平均年齢35歳という若手の多い会社になりました。

また社員約50人のうち10人が女性職人です。何か劇的な変化があったわけではなく、少しずつ変化していったという話をしたいと思います。

>>> 女性職人が入ることで社内が変化

女性職人採用のきっかけは平成元年、事務スタッフとして入社した女性が「私も現場に出たい」と言ったことでした。彼女の父親は大工さんで、現場に立つことに抵抗がなかったそうです。ちょうどバブル時代で仕事が多かったため、軽い手伝いでもしてくれればと現場に行かせました。

はじめは掃除くらいしかできなかったのですが、現場から帰って練習をしたり、アイシャドウなどの化粧品を材料に混ぜて色を付けるなどの工夫をし始めたのです。それまで白や灰色など純和風の色しかなかった漆喰に鮮やかな色や模様をつけたことが女性のお客様にウケて、新しい仕事が増えていきました。

結婚、出産、育児を経て戻ってきてくれる人もいます。いままでは女性は結婚や出産を機に辞めるのが当たり前でしたが、復帰を望む女性職人が増えたので当社なりの産休・育休を考えました。

お腹が大きくなってくると現場に出るのは危険なので、見本作りなどのバックヤードの仕事をお願いするようにし、育休を終えたら現場に戻ってもらうことにしたのです。職人が育児休暇を取って復帰する。建設業界では画期的な事例として業界内でも認められるようになりました。

もちろん、結婚や出産を機に引退する人もいますが、選択肢が増えたことが大切なのではないかと思います。彼女たちは4〜5年かけて左官の技術を覚えます。やっと稼げるようになった頃に辞めなければならないのはもったいない。会社としても仕事ができる人が戻ってきてくれるのはありがたい。育児休暇制度はWin-Winだと考えています。

ベテランの職人の中には反発する人もいました。現場は曜日に関係なく動くことが多く、家庭を優先して休むなどあり得なかったのです。

理解してもらうまで時間はかかりましたが、休みたい日を早めに周知することで現場のコントロールは可能です。いまでは男性の職人も子どもの運動会がある日など、休みを取るようになりました。

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有限会社原田左官工業所

代表取締役社長

原田 宗亮氏

https://www.haradasakan.co.jp/

事業内容/左官工事、タイル貼り工事、防水工事、れんが・ブロック工事業