産創館トピックス/講演録

《講演録》マザーハウスのトップが語る「小さな思いから新しい道を創造する情熱と思考」~第一部

2020.02.13

♦ビジネスの論理より思いに従う

私たちは今、バッグやジュエリーを世界6か国で生産して4か国で販売しています。「途上国から世界に」というビジョンのもとに私たちのブランドは広がっています。

実は2か国目のネパールに進出する時に、バングラデシュでバッグに集中すべきだという声がありました。そのほうがビジネスとして効率がいいからです。

でも私たちのビジョンは「バングラデシュから世界に」ではなく「途上国から世界に」でした。従うべきはビジネスの論理より哲学。ビジョンを掲げた時点で2か国目の進出は私たちにとって当たり前だったのです。

 
相反する出来事に出会うと、どうしてもお互いを批判し合うようになります。

でも2つのいいところを見つけ出す姿勢は重要。大量生産のいいところを学び、手仕事のいいところを学び、両方を掛け算することで手作りのバッグが月産1万個できるのです。

 
私は社長ですが、日本のオフィスではなく、デザイナーとして現場で何かをつくることのほうが多いです。
現場を走りながら経営的なフィードバックをすることで、現場と経営がかけ離れた論理で動かないようにしています。

 
掛け算は簡単には生まれません。でも、考えを巡らせる作業をやめてはいけないし、掛け算は現場からしか生まれません。

それがThird Way(第3の道)に対して私がやり続けてきたこととマザーハウスの経営哲学です。

 
>>>《講演録》マザーハウスのトップが語る「小さな思いから新しい道を創造する情熱と思考」~第二部に続く

 
(文/荒木さと子)

 

山口 絵理子氏(株式会社マザーハウス 代表取締役兼チーフデザイナー)
1981年埼玉生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。ワシントン国際機関でのインターンを経てバングラデシュBRAC大学院開発学部修士課程に留学。現地での2年間の滞在中、日本大手商社のダッカ事務所に研修生として勤めながら夜間の大学院に通う。2年後帰国し「途上国から世界に通用するブランドをつくる」をミッションとして株式会社マザーハウスを設立。現在バングラデシュ、ネパール、インドネシア、スリランカ、インド、ミャンマーの自社工場・提携工房でジュート(麻)やレザーのバッグ、ストール、ジュエリー、アパレルのデザイン・生産を行う。日本国内29店舗、台湾6店舗、香港2店舗、シンガポール1店舗で販売を展開(2019年9月時点)。Young Global Leader (YGL)2008選出。ハーバードビジネススクールクラブ・オブ・ジャパン アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2012受賞。毎日放送「情熱大陸」などに出演。

株式会社マザーハウス

代表取締役兼チーフデザイナー

山口 絵理子氏

https://www.mother-house.jp

事業内容/発展途上国におけるアパレル製品及び雑貨の企画・生産・品質指導、同商品の先進国における販売