ものづくり

《講演録》マツダデザインの挑戦

2020.01.23


《講演録》2019年11月28日(木)開催
【事業推進セミナー】マツダデザインの挑戦

前田 育男氏(マツダ株式会社 常務執行役員)

技術革新が進み、大きな分岐点を迎えている日本の自動車業界。そんな中、クルマに命を吹き込むデザイン哲学を打ち立てたマツダ。2009年からデザイン部門のリーダーとして、クルマのデザインとマツダブランドの様式を統括する前田育男氏が、この10年間の挑戦を語った。

 
▶危機感1 混沌とした日本の景色が与える影響

私のモチベーションの源泉は危機感です。

まず日本の環境。日本の街の景色を思い浮かべていただいたらわかるように、日本の景色にはさまざまな色、スタイル、カタチが含まれています。クルマはその中を大量に走っており、日本の景色を構成する重要なエレメントになっています。

しかし、景色が混とんとしていると、どんなデザインのクルマを置いても違和感がない。つまりなんでもありの状態になる。そんな環境では良いクルマをつくろうというモチベーションを持ちにくい。それがひとつめの危機感です。

 
たとえばイタリアの地方都市は、歴史を守り、様式を守り、どこに行っても美しい統一感があります。

それらは偶然守られたわけではなく、厳しいルールがあり、長い時間をかけて守られてきたものです。乗り物はその様式の一部として機能しており、古い景色に色やツヤを与えています。

乗り物のデザイナーにとって、景色が創作フィールドであることは間違いなく、そのことがプロダクトデザインをあるレベルまで押し上げていると言えます。

 

次ページ >>> 危機感2 技術革新が与える影響

マツダ株式会社

常務執行役員

前田 育男氏

https://www.mazda.com