《講演録》マツダデザインの挑戦
▶企業ブランドはまず商品から
クルマだけではなく、企業のブランド様式の構築の指揮も執ってきました。
一般的にブランドといえばCIとかVIの整備が主体であり、ロゴとマークをつくればできあがると考えられがちですが、そうではありません。企業の生きざまを反映させたものがブランドの様式であるべきです。
ブランド様式を構成するのはまず商品。商品に特徴がなければ絶対にブランドはできません。クルマのデザインに個性、一貫性、継続性を持たせ、作品を束ねて群で見せて印象づける。それを補完する意味でブランドカバーをかぶせます。
次にハコ。商品をつつむパッケージですね。代表的なのは販売店です。都内の数店舗をブランド店舗として位置付けて、新しいイメージづくりを行ないました。作品であるクルマをきれいに見せ、しかも敷居を上げずに誰でも気軽に入れる、そんな店舗です。
建築家だけに任せず、われわれカーデザイナーも一緒に入って共同でつくりました。クルマと空間でアートの世界を表現したのです。
それからフォント(文字)。フォントはブランド様式の鑑です。以前、マツダは異なる8種類の文字を使っていました。それは鑑が8つあることを意味します。ブランド様式をつくり込むという意識が圧倒的に低かったのです。
そこでマツダフォントとしてひとつに絞りました。フォントも美意識や哲学を反映したものであるべきで、クルマの安定感やカーブなどを文字に表現したのです。
次ページ >>> 光で表現する次世代のマツダブランド