産創館トピックス/講演録

《講演録》ビジネスを変える「コトバのチカラ」~お客さまの心を動かす「11のスイッチ」とは?~ [1]

2019.07.26

―― なぜ「言語化」が重要なのか

どんな企業活動もマーケティング活動も、当然ながら最終的には人を動かす必要があります。人は言葉を理解し、言葉で動く生き物だからです。もちろんイメージで動く人もいるでしょうが、やはり最終的に腹落ちして「よしやろう」「そっちの方向に行こう」と自ら思えるのは、言葉の力のなせる業だと思うのです。ですので「言葉を定義する」のがとても大事になってきます。

では具体的に誰に対して言葉を使うのか?

ビジネスの場合、「ふたりの人」がいます。ひとりは、「世の中の人」。マーケットに認められなければなりませんから、世の中の人と共有するための言葉が必要になります。そしてもうひとりは、「会社の中の人」。社員や共同経営者といった仲間と共有するための言葉が必要です。

 

―― 仲間内で共有し、世の中を動かす「企業の言葉」とは?

どんなに素晴らしいモノやサービスでも、その良さが伝わらなければ愛されることはありません。企業側の目線で「伝える」努力をしても、世の中の人に「伝わる」ことがなければ意味がなく、売れないのです。

だからこそ世の中の人と共有するための言葉が重要なのですが、僕はそれにも増して「仲間内で共有する言葉」が大事だと考えています。目の前に対峙している人たちを動かすことができないのに、世の中の人を動かすことなんてできないからです。

では仲間内で共有し、世の中の人を動かすために必要な「企業の言葉」とは何でしょう。それは「企業ビジョン」です。往々にして課題は複雑で、いろんなものが巻きついています。その一つひとつの糸を解きほぐし、課題をシンプルな言葉にしたのが企業ビジョンということになります。

ここで、ある3社の企業ビジョンを紹介しましょう。

「テクノロジーを介して何百万人もの人の生活を変える」
「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」

1社目はアップル、2社目はグーグル、そして3社目は本日聞き手と進行役を務めてくださっている山崎さんの会社、マザーハウスです。

いずれも会社が果たすべき課題がシンプルな言葉で表現されています。なかでも3社の企業ビジョンに共通するのは、「誰にどうなってほしいのか」が定義されている点。ここが明確でなければ企業ビジョンがぼやけ、仲間内で思いの共有が図れません。すると企業の思いも世の中に正確に伝わらなくなるのです。

企業の課題を明確にして、それをシンプルな言葉に置き換える。そのためのコツは、「誰にどうなってほしいのか」を想像しながら言葉を考えることです。課題を言語化する際の参考にしてもらえたらと思います。

 
>>>《講演録》ビジネスを変える「コトバのチカラ」~お客さまの心を動かす「11のスイッチ」とは?~ [2]に続く

(文/高橋武男)

 

間宮洋介氏(株式会社 Que 代表取締役CEO)https://que.tokyo/
1994年電通入社。2年間のマーケティング局、16年間の営業局勤務を経て、2012年よりCDC(クリエイティブ・デザイン・センター)。「戦略とは、課題の言語化である」を戦略立案の芯に据え、戦略から表現まで統合し、あらゆる課題解決業務に従事。関わる領域は、広告コミュニケーションにとどまらず、事業系ソリューション、中長期経営計画立案、インナーのモチベーション・デザインなど多岐にわたる。2017年に電通より独立。2018年 株式会社 Que 代表取締役CEOに就任。 主な仕事として、キリンビール「一番搾り」「氷結」キリンビバレッジ「午後の紅茶」「FIRE」におけるコミュニケーション・デザイン。トヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」「PRIUS PHV」「C-HR」のコミュニケーション戦略、NTTドコモ「2020 東京オリンピック協賛プロジェクト」、プレナス「ほっともっと」ブランディング・ディレクション、日清食品「カップヌードル」「UFO」におけるキャンペーン・プランニングおよび、フロンテッジにおける事業コンサルテーションなど。

 

山崎大祐氏(株式会社マザーハウス 取締役副社長)https://www.mother-house.jp/
1980年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中にベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧困・開発問題に興味を持つ。2003年、ゴールドマン・サックス証券に入社。エコノミストとして、日本およびアジア経済の分析・調査・研究や各投資家への金融商品の提案を行う。2007年3月、同社を退社。大学時代の竹中平蔵ゼミの1年後輩だった山口絵理子氏が始めたマザーハウスの経営への参画を決意し、同年7月に副社長に就任。マーケティング・生産の両サイドを管理する。マザーハウスは途上国でバッグやジュエリー、シャツなどを生産。国内29店舗、香港および台湾8店舗で販売している(2018年7月現在)。

株式会社Que

代表取締役CEO

間宮 洋介氏

https://que.tokyo/

事業内容/広告コミュニケーション企画・制作、経営計画&事業開発コンサルティング、コンテンツ開発プロデュース