工夫のDNA生かし、弁当・行楽グッズを展開
つまようじの生産で日本一を誇る河内長野市。ピーク時には50社ほどが軒を連ねたが、安価な海外生産品に押され今では約10社に減ってしまった。
だが、それぞれに新たな活路を見出し歴史をしっかりとつないでいる。中でも100円ショップには欠かせない弁当や行楽グッズのメーカーとして進化を遂げているのがまるきだ。
1888年につまようじの生産を開始した。戦後には、持ち手のところに「こけし」と呼ばれる溝をつけて量産化したほか、それまで角ばっていた竹串を丸くするなど、今でこそ定番となっている商品を初めて世に出している。
ある100円ショップが商品調達に困り、つまようじを直接売ってほしいと頼み込まれたのがきっかけでそことの取引が始まった。
早くから中国に生産のネットワークを持っていたことで、100円ショップの「安くて、便利で、いいものを」というニーズに応えることができた。
飛躍のきっかけとなったのは、初めての企画・デザイン担当社員として山下氏を2004年に採用してからだ。「もし自分に子どもがいたらお弁当をこんなふうに楽しくしたい」と考え、動物シリーズのピック(プラスチック製つま楊枝)を商品化。
その後、ニンジンやハムを花型などにする抜き型などヒット商品を次々に生み出した。「デコ弁」という言葉を商品名につけ世に初めて送り出したのも山下氏だ。
かつてはホームセンターや百貨店などとの取引が多かったが、「一緒に商品開発をしようという考えを持っているのが100円ショップ。返品もなければリベートもない。われわれ協力企業を尊重してくれるのでモチベーションも上がる」と木下氏。
また、OEMではなくまるきブランドで商品が店に並ぶため、購入者の喜びの声が手紙などで直接届くことも大きな励みになったという。
近年はSNSの力が大きくなった。ひとたび高い評価が拡散されると驚くほど売れる。発売して時間が経ってからヒットした「ふんわり厚焼きホットケーキ型」もその一つだ。
こうしたSNS上での声や意見にも目を通しながら日々改善のヒントと新たなニーズを探してきた結果、今ではアイテム数も2000を超える。
「デコ弁グッズのまるき」「行楽用品のまるき」の評価もすっかり定着。つま楊枝から始まったちょっとした工夫のDNAは今なおしっかり息づいている。
(取材・文/山口裕史)