持ち味を活かし、愛される商品づくりを支える相棒たち
大阪産業創造館プランナー 中尾 碧がお届けする
社長だって一人の人間、しんどい時もあります。そんな時にモチベーションの支えとなり、「一緒に頑張っていこな!」と声をかけたい“人”または“モノ”がきっとあるはずです。当コラムでは社長のそんな“相棒”にクローズアップ。普段はなかなか言葉にできない相棒に対するエピソードや想いをお伺いしました。
【 vol.24 】竹新製菓販売株式会社~持ち味を活かし、愛される商品づくりを支える相棒たち~
竹新製菓販売株式会社は、あられやおかきを中心に日常のちょっとした幸せに繋がるお菓子を製造・販売している。
社長である髙橋憲氏は幼少期の頃から会社を継ぐことを心に決めており、大学を卒業後も食に関わる仕事をすべく食品部門も擁する大手化学メーカーに就職、業務用調味料や冷凍食品の営業に従事した。「人がやらないことをやる」という気持ちを胸に顧客に向き合い続け、社長表彰も受けた。
28歳の時に同社に入社し、その後常務、専務を経て2010年に43歳で社長へ就任。だが、その間は必ずしも順風満帆ではなかった。
約20年前、それまで大口だった取引先が民事再生法を申請し、同社も大きなピンチを迎えた。しかし若い頃から大切にしてきた顧客のニーズを丁寧に拾い、きちんと向き合い続ける髙橋氏の営業スタイルは他の得意先にも認められており、同社を応援する企業が現れた。
髙橋氏自身もそうして支えてくれる顧客から、のちの自社企画商品への注力にも繋がる「良い商品を作ること」の大切さを学び、大口取引先の倒産と逆境を切り抜けた経験は、「絶対に会社をつぶさない」という覚悟を刻み込んだ。
社長就任後、今度は組織について考え直す機会があった。髙橋氏は入社以来長らく、自分たちで考えて仕事をするという姿勢が社内に足りないことを課題に感じていた。組織内に横たわる業務のアンバランスさを感じながら仕事をしていたある日、新卒で採用した社員が退職した。期待していただけにショックだった。
「このままではアカン」。危機感を抱いたのは髙橋氏だけではなく従業員も一緒だった。それぞれが自分の役割を再認識し、業務のブラックボックス化をやめた。受け身な姿勢は自ら率先して動くスタイルに変化し、各業務の効率が驚くほど上がった。
こうして生まれた「自分たちで考えて動こう」という姿勢は商品開発・販路開拓も変えた。そんな新しい流れを生み出しているのが今回の“相棒”である営業部の中島氏と太田氏だ。主に中島氏が商品企画、太田氏が販路開拓を担う。20年前に髙橋氏が痛感した「良い商品を作ること」を中心となって実践する2人だ。
今春リリースした「高知県産ゆず香る幸せのり天」は、「女性に楽しんでもらえる味・パッケージに」と中島氏が大手小売店のバイヤーやメーカーと綿密なやりとりを重ねて企画したもの。相手の懐に飛び込み、信頼される関係を築くことができる中島氏の強みが活かされた。
一方、高知県産の柚子が売りであることにピンときた太田氏は、熱意と持ち前のフットワークの軽さを活かして何とこれまで取引のなかった高知県の観光協会にアプローチ。その結果、高知県のSNSや運営するショップでも取り扱われるようになった。
髙橋氏が何も言わずとも2人とも自発的に動き、新たなファンを開拓した。太田氏はO-TEX、大阪商品計画など、商品開発や販路開拓を支援する大阪産業局の事業でも展示物の準備やプレゼンで大活躍。展示会では積極的に来場企業に声をかけ、食品関係以外の企業との取引が決まった。
新しいチャレンジを続ける2人は「とても楽しい」と笑顔を見せる。その横顔を見る髙橋氏も嬉しそうだ。
「『こんなん欲しい』を創りたい!」を合言葉に、これからもそれぞれの強みを活かして「愛される竹新」をめざす。
(取材・文/大阪産業創造館マネジメント支援チーム プランナー 中尾 碧)