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自社強みの言語化で新たな一歩、LETS ONE株式会社がリブランディングを通じて成し遂げた変革の軌跡

2023.06.02

「WE LOVE TABLET」。そんなキャッチフレーズのもとで社員が一つになり、社名変更・本社移転という大きな変革を乗り切った。変革=リブランディングは、80年近い同社の歴史の中で二度目のことだった。創業は戦後間もなく。結核予防のため、人々が共同で使っていた黒電話の受話器に取り付ける固形の消毒薬を作り、独自の販売網を築き上げた。

時代の変化を捉え、大きく変化することで80年近く経営を継続してきた同社。

一度目の変革は1980年代後半から90年代にかけて。日本電信電話公社が民営化して日本電信電話株式会社(NTT)になり、電話機はレンタルから一人一台の時代に移り変わる中で、主力の電話消毒薬は必要とされなくなっていく。そこで、「モノ」ではなく、粉末を錠剤化する「技術」にスポットを当てることに事業方針を転換。ちょうど100円ショップが流行り出し、大腸菌O157による集団食中毒を背景に、清潔志向が強まっていた。時代の後押しもあり、手軽に買ってすぐに使える消毒剤・除菌剤の需要が増大。メーカーやショップからのオファーのもと、固形タイプの排水口のぬめり取り剤や洗濯槽洗浄剤、入浴剤などの製造がメインとなっていった。

冒頭のキャッチフレーズが生まれたのは、2012年に東京で行われた雑貨系の大きな展示会への出展がきっかけ。顔を見せず、OEMで製品を作る自分たちが売りたい「モノ」とは何か?一度目の変革から20数年が経ち、働く顔ぶれが変わる中で、社員が集まり、自社の強みについて議論を重ねた。「自分たちは粉末を錠剤(タブレット)にするプロフェッショナル集団だ」。展示会には営業だけでなく、研究や製造担当のメンバーも参加。事前にロールプレイングをして、来場客への説明を交代で受け持つことで、社員一人一人が自分たちの強みを言語化できるように。販路拡大を求めての出展だったが、結果的にインナーブランディングの面で貴重な場となった。

「WE LOVE TABLET」が誕生した展示会。

その後、メーカーからの依頼を受けて加工するだけに留まらず、社内での企画・提案も活発に。それと共に、旧社名での活動にやりづらさを感じることが増えてきたという。「旧社名の『第一商事』は、製造部門も商社部門も一丸となって組織をつくっていこうという当時の事業内容に沿った社名でしたが、商社と間違われることも多く、今の我々に合う名前にしたいという思いがありました」と代表の和田氏。

2018年、二度目の変革を起こす。堺市にあった工場の向かいの敷地が空いたのを契機に、本社を住吉区から移転し、新しい社名に変えることを決断した。「TABLET」から「LET」を、「第一商事」から「1(ONE)」をもらい、本社・工場を一つにする、複数の成分・バラバラの粉を一つの錠剤にするというという意味も込めた「LETS ONE」。ロゴマークには、中央に「1」。青(アルカリ性)と黄色(酸性)が道路を挟んで向き合っている。

同社ロゴ。裏方に徹するOEMでのものづくり、強みや目標を言語化するメリットは大きい。

シンプルな言葉に集約することで思いが一つになるという経験から、社名の副題となるフレーズ「キレイと香りで幸せつくり」も生まれた。かつての電話消毒薬から現在つくる製品まで、不変のテーマとして「キレイと香り」を据えた。これにより、手がけるジャンルが広がる中で、受託を決める際の指針としても役立っている。

本社と工場を一体化したことも、よい効果をもたらした。和田氏の考えは、「工場自体が営業してくれる」ということ。来客は製造現場へ必ず案内し、一部をガラス張りにするなどオープンなつくりに。安心してもらえるポイントの一つとなっている。

新社屋にはカフェのようなリラックススペースも。商談から社員のランチタイムにまで使える。

コアとなる部分を言語化し、みんなで共有する。社員一人一人が自社の強みを語り、誇りを持つ。二度目のリブランディングは、社内の意識改革から始まったことで、成功に結び付いたともいえる。現在では、若手に採用を任せる機会を増やし、経験年数に関わらず全社員が会社のアイデンティティを意識できるようになった。

なかなか全員が集まる機会を持てなかったコロナ禍を越え、2022年、同業の会社をM&Aで一つに。「スケールメリットも活かしながら、みんなで一体となってタブレットのさらなる可能性を広げていきたい」と話す。

代表取締役 和田 信二氏

(取材・文/衛藤真奈実)

LETS ONE株式会社

代表取締役

和田 信二氏

http://www.letsone.co.jp

事業内容/粉末薬品の錠剤加工・小分け充填、電話消毒薬の製造、トイレタリー製品の企画・開発