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【ロングインタビュー】大阪ならではの「笑える蛇口」が、知名度も技術力も高めてくれた

2016.03.09

―一つひとつの「ネタ」のアイデアはどこから?

発売2年目から社内で公募をしています。「もっと笑わせたい」と社員のやる気も相当なものです(笑)。もちろん、アイデアだけでは製品化はできません。実用に耐えるものであることは開発当初から大前提にしていたので、何より技術力が必要でした。

例えば、「びよ~ん」という蛇口。名前のとおり「びよ~ん」と伸びる部分は継ぎ目のない一本物の金属です。弧を描いた絶妙のバランスがなければ、笑いに転じることはできません。

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従来の鋳造技術だけでは到底作ることができないのですが、せっかくのネタをどうすれば形にできるだろうと試行錯誤しました。まずは常識を捨てた自由な方法でプロトタイプを作ってみて、それから量産化する方法を考えました。

―では、技術力も向上した?

はい。得られた成果の中で最も大きいことの一つです。新しい技術を磨くことで、全体の7割を占めている量産品の製造技術も上がって、クレーム等の数も減りました。今なら、美しさで人気があるヨーロッパ製品の流麗なデザインも実現できる技術力があります。

―ほかにどのような成果がありましたか?

会社の認知度を飛躍的に高めてくれたことが挙げられます。4年前の発売以来、業界内はもちろん、一般の方がインターネットのクチコミやまとめサイトで取り上げてくれるなど、反響は大きいです。

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このシリーズは売上げを目的としていません。生産数も限定していますし、すぐに新製品と入れ替える。実は、作れば作るほど赤字になるのです(笑)。それでも、社外への宣伝効果の大きさや、「もっと笑えるものを作ろう」と社員の士気を高め、実際に技術力が向上しているということを考えると、大きな利益をもたらすシリーズになりました。

「ここで赤字でも、ほかで挽回できる」と進めていけるのは、オーナー経営である中小企業の強みを活かしたやり方だと思います。

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株式会社カクダイ

代表取締役副社長

多田 修三氏

http://www.kakudai.jp/

事業内容:水道用品の製造・販売・輸出入を行う創業136年の老舗企業。いわゆる普通の「水道」「蛇口」から伝統工芸品とコラボしたものや笑える蛇口まで広く取り扱う。