【ロングインタビュー】大阪ならではの「笑える蛇口」が、知名度も技術力も高めてくれた
―「Da Reya」シリーズとは反対に、目立たない分野で成功されたのですね。
経営に少し余裕が出てきてから、もっと多様な商品を作り、ラインナップを広げたいと考えるようになりました。そこで、淡路瓦や七宝焼、蒔絵など、全国各地の伝統工芸とのコラボ商品を作りました。独自性があり、今もシリーズは継続していますが、ニーズがあまり多くないのと、会社の知名度が低かったため、それほど売れませんでした。
人気の高いヨーロッパ製品のデザインを真似して失敗したのもこの頃です。やはり売れませんでした。それに、もし成功したとしても、これでは代替品にしかなりません。海外製の模倣ではなく、誇りを持ってメイドインジャパンのオリジナルを生み出したいという思いがさらに強くなりました。
当時、水道が必要とされる住宅市場そのものは、人口の減少に伴い縮小していくと予想されていました。大手メーカーは売上げが減る分、必ずシェアを拡大してくるはず。バブル崩壊の際の経験から、そう悟りました。今こそ、他社に真似のできない独自のブランドを作る必要がある。そこで生まれたのが「Da Reya」シリーズでした。
―どんなシーンで使われているのですか?
飲食店や商業施設などが多いですね。お子さんが一度使ってびっくりして、「太った蛇口のお店に行こう」と再度親を引っ張っていくという話も聞きました。商品を介して会話が広がるというのは、狙い通りだなと嬉しく思います。
子どもたちは、まだ「一流」とされているヨーロッパ製のデザインを知りません。驚くような蛇口を見て、デザインや設計、構造に興味を持ってもらい、20~30年後、世界で勝てるものを作ってくれたら、というのが密かに大きな夢です(笑)。
―お笑い好きの社風なのですか?
ノリはいいと思います。東京・大阪・名古屋などで開かれる見本市では、いつもブースそのものの見せ方でも「笑ってほしい」と力を入れています。ブースコンテストでも1位になるなど、業界の人間で知らない人はいないのでは?と思います。
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株式会社カクダイ
代表取締役副社長
多田 修三氏
事業内容:水道用品の製造・販売・輸出入を行う創業136年の老舗企業。いわゆる普通の「水道」「蛇口」から伝統工芸品とコラボしたものや笑える蛇口まで広く取り扱う。