「駐車場、あいてるんならシェア」 ベンチャーの突破力で世界をめざす
月ぎめ駐車場や個人宅の駐車スペースの空き情報をスマートフォンで確認し、1日単位で予約、利用できるサービスを提供している。事業開始から2年で駐車場の拠点を4400にまで広げ、コインパーキング業界で拠点数3位に躍り出た。それでも「まだ緒についたばかり」と金谷氏。
このほど第三者割当増資で集めた6億円の資金を生かし、今年は事業を一気に加速させる。「年内には1万拠点、5年後には10万拠点に増やしたい。上場後は関西のインターネット系企業で初の時価総額1000億円をめざす」。語り口は穏やかだが繰り出される言葉は力強い。
2年前までは求人広告専業だった。「世の中になくてはならない会社になろう」と社員に呼びかけ、普段感じる困り事を出してもらった中に「現地に行って駐車場が満車で入れられないことが不便」との声があった。「それなら使われていない駐車場を活用すればいい」。事業のアイデアが生まれた。
調べてみると、月ぎめ、個人宅駐車場は全国で1億台分以上。そのうち約3割が空き状態であることがわかった。一方、大阪では毎秒3万1千台のペースで路上駐車が繰り返されていて、その多くは駐車場を見つけられないことが原因であることも知った。「駐車場のオーナーにとっては空いたままの資産を収益化でき、かつ路上駐車を減らすことで渋滞、事故の減少にもつながる。世の中に求められている事業だ」と確信した。
月ぎめ駐車場の看板を探し業者に電話を入れ、個人宅には折り込みチラシで周知を図った。地道な作業だが、「渋滞や事故、路上駐車などの社会問題の解決にもつながるため、求人広告のように相手を“説得”する必要がなく、すんなり“納得”してもらえた」。利用料金は周辺のコインパーキングの7割に抑えた。
利用者にはネット広告やキーワード検索で上位に表示されやすくなるSEO対策に力を入れ、そのための専門人材をスカウトした。甲子園球場に近い個人宅駐車場のオーナーの中には月5万円以上稼ぐ人もいるという。順調に売上げを伸ばし、事業開始から1年半で求人広告業から完全に撤退し、業態を100%転換した。
国内で圧倒的なシェアをとるだけでなく、今後は同時に海外展開も進め、めざすのは「グーグルやアップルのような会社」だ。「生まれ育った関西に、ベンチャーがベンチャーを生むサイクルを作りたい」という思いがその根底にある。
誌面では紹介しきれなかったロングインタビューはコチラ
→急成長のシェアリングエコノミー市場で勝負 2年でコインパーキング業界3位に
(文・写真/山口裕史)