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【ロングインタビュー】「ベンチャー型事業承継」は古くて小さな会社にこそ商機あり

2015.12.03

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―当時の家業の状況は?

いかにも古い商店といった趣で、「もうちょっとちゃんとした会社にせなあかんな」という気持ちはありました。やっぱり、祖父、祖母、親父が働く姿を見てきましたから、つぶしたらあかんなと。それで、ある時会社の財務状況を調べたんです。そうしたら、事務所にエアコンもない会社やったんですけど、安定した堅実な経営だった。バブルの時代に下手に不動産なんかに手を出さずに一生懸命仕事をしてきたおかげやなと。

感謝の気持ちと同時に、ここからさらに成長させないとあかん、と感じたんですが、父がベンチャーキャピタルに見えてきました(笑)。なんか新しい事業を起こせるくらいの資金はあるんや、と。

でも親父とはあまり仲が良くなくて年に数回しゃべるくらい。しかもぶっきらぼうな会話です。でもね、仲悪いことは家業を継ぐ上で決して悪いことではないと思っています。仲が良かったら継ぐ側が先代の今ある事業を守ろうとしがちになるし、甘えも出ると思うんです。甘えがない分、いろいろ考える。どうしたら余裕資金を新しい事業に使えるかと。

まず認められることやと思い、会社に来たら従業員にあいさつし、父には敬語で話すようにしました。仕事で実績を出していくと、従業員の僕を見る目が変わりますよね。親父も徐々に認めはじめる。今や、と思って親父に新しい事業の話を持ちかけました。

―新しい事業のアイデアはどこから?

当時、事業者向けのカタログ通販アスクルが急成長していたころです。ネットで注文を受けて即時配送するこのビジネスモデルをバイク、自動車の部品でできないかと。調べてみたら、この業界はIT化が遅れていたんです。斜陽業界ほど遅れている分、チャンスがあるんだなと。今までの経験を生かしながら家業を継続するにはこれしかないと想い、カスタムジャパンという会社を創業しました。

それはね、僕が中学生のころサッカーから卓球に競技を変えたら勝てたというのが頭にありました。サッカー教室は2つ掛け持ちしてたんですが、どちらも一番下のクラス。ところが卓球を始めたらおもしろいように勝ち進んだんです。大阪はレベルが高いけど、奈良の大会だったら上位にもいける(笑)。自分が戦える場所を探すことが大事なんです。

もうひとつ、クラブDJの経験も役立っています。DJって、従来ある音楽をアレンジしえ組み合わせるんですけど、それで新しい音楽に生まれ変わって、楽しんでもらえる。あるものをリミックス(再定義)すれば支持されるんだということを実感していました。これを自分のビジネスに生かしたんです。

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株式会社カスタムジャパン

代表取締役

村井 基輝氏

http://www.customjapan.jp

事業内容/2005年創業。バイク・自転車・自動車パーツと整備工具のカタログ・ネット販売を手掛ける。家業の株式会社日本モーターパーツの3代目も継承した。