ものづくり技術に生きる創業精神
導電塗料をはじめ、電子部品に使われる素材の開発・製造を手掛けるのが、大阪市城東区の大研化学工業株式会社だ。
創業時は、陶磁器の塗料開発と製造を事業内容にしていた。金に溶剤を混ぜて伸びをよくし、職人が使いやすく、質も落ちない「金液」の製造を得意としていた。
この技術をもとに、創業者から社長のポストを継いだ原田昭雄氏が、入社当時から取り組んできたのが導電塗料事業だ。
販路には、自動車部品で世界的なシェアを誇る独ボッシュのアンチロックブレーキシステム用セラミックス基板に使用される銀電極などがある。
世界のトップ企業に採用されるほど信頼性は高い。それは、京セラが創業当初、受注先に苦労していた際、東京芝浦電気(現東芝)を紹介したというエピソードからもうかがえる。
他にも村田製作所やパナソニックなど、大手企業からも数々の感謝状が贈られている。
長らく主力商品として貢献してきたのは、ICチップリードフレーム用のメッキ液や、積層コンデンサ用のパラジウム材料だ。電子機器の普及に伴い、1970年代末には利益が1億円を超えたという。
しかし、その後パラジウムは比較的安価なニッケルに代替され、利益が大幅に縮小する危機に見舞われた。ボッシュ向けの銀電極事業で難局を乗り越えたが、この危機を教訓に、プラズマ技術を活用した金属粉加工や太陽光パネルに使われる銀ペーストの開発などに積極投資をしている。
会社全体で研究開発を推進するという社風は、「誠実、誠意、感謝、心と心」という創業精神を反映している。
そうした創業精神が、ものづくり技術に生きる、まさに“お手本”的な企業だ。
(大阪産業創造館プランナー 坂田聡司朗)
▲大研化学工業の銀電極が使われた集積回路(ボッシュ製)