産経関西/産創館広場

ネット活用 スーツ販売の挑戦

2014.12.01

大阪谷町に現存する唯一の縫製工場を拠点に、フォーマルスーツの製造・卸・小売業を行っている株式会社NFL(大阪市中央区)。3代目として事業を牽引している川辺友之社長は、4人兄弟の3番目(次男)として生まれた。家業を継ぐ気はなく、東京の大学を卒業後、大手スーパーに就職するも、阪神・淡路大震災の影響から社内で大リストラが断行されたタイミングで退職。関東で起業の機会をうかがっていたが、家業の縫製工場を手伝うよう兄弟に説得されて帰阪する。

しかし、家業は危機的な状況に陥っていた。1998年当時で売り上げの60億円に対し借金が数十億円。しかも粗利益率は20%以下で在庫の山。2001年には大手取引先の相次ぐ倒産により売り上げは20分の1に、200人いた従業員は10人にまで激減していた。

そんな状況を打破するべく、先代が立ち上げた「日本一安い結婚式場」が市場に受け入れられ、その利益を本業の補填(ほてん)にあてることで何とか食いつなぐ。川辺氏自身が家業を一部承継する形で新会社のNFLを立ち上げたのはそれから3年後のことだった。

工場を持っている強みを生かし、下請けからインターネットを使った製造小売業にシフトし、毎年150%の成長を達成。粗利益率も65%まで改善しV字回復を果たす。数年後、ネット販売の売り上げが頭打ちになると卸売りも開始し、さらに直営店も出店するなど事業の幅を広げ、現在は売り上げも安定。最盛期以上の利益を上げ、従業員も60人にまで増えている。

川辺社長は、自身が成功したノウハウを広めることで、同じ立場にいる中小企業を元気にしたいと常々考えている。直営店やSNS(交流サイト)で実際に行った販促が効果的だったと思えば、自身がたち上げた地域の交流サイト「まちブログ大阪」でノウハウを公開。また自身がクラウドファンディングで1500万円を調達して直営店の出店を実現した経験を機に、大阪で新しいことにチャレンジしようという人を応援するために生まれたクラウドファンディング「FAAVO(ファーボ)大阪」の運営にも携わるようになった。

「人が出会えば新しいビジネスが生まれる」と語る川辺社長。大阪を元気にする仕掛け人の周りには、ますます人の輪ができそうだ。

(プランナー 浜田哲史)

NFL

▲男性用フォーマルウェアとドレスのショップが併設する基幹店

株式会社NFL

http://nfl.co.jp/