産経関西/産創館広場

貯水槽管理 安心安全な生活用水を

2013.01.21

 

ビルやマンションなどに設置された貯水タンクのメンテナンスおよび修理を手がける、きんぱね株式会社(大阪市北区)。創業以来、奥西穂積社長は人々に生活用水を提供する貯水タンクの管理技術の研(けん)鑽(さん)に全力を注いできた。

 FRP(繊維強化プラスチック)製貯水タンクは屋外で設置されていれば、耐用年数は約15年。それ以上経過すると強度が20~30%ほど低下してしまう。要因としては、水道水によるFRPの加水分解、太陽光による紫外線劣化などがあげられる。ほかに、定期的にメンテナンスが必要となる事象として、FRP製パネルの結合部分に用いる止水用パッキンの劣化による漏水事故や、補強材として用いられた金属のさびの発生・腐食などがある。

 通常、耐用年数を超えたタンクは全体が一新されるのだが、古くなったFRP材料に同社の技術で水槽内外から補強・復元を行い、劣化防止コーティングなどを施すことにより、新品以上に貯水能力を強化できる。しかも、新しいタンクに取り換えるのと比べ、費用は50%以下だ。

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 この技術は、自社で開発した特殊なプライマー(下地処理剤)を利用した、世界初となるFRP製品のリユース(再使用)工法だ。このプライマーはポリエステル樹脂を分子同士で結合させるため、従来の工法と比べて接着強度が優れており、既存のFRP母材と一体となるので二度と剥がれることがない。

 施工時間にもこだわりがある。貯水タンクを補強・修理するにはタンク内を空にする必要があるが、断水すると住民に生活に迷惑を強いることになるため、工期は原則1日で終わらせる。

 事業への思いがさらに強まったのが、阪神・淡路大震災での体験だ。神戸の15階建の集合住宅の屋上に設置された2つの貯水タンクは、地震以前に修理していた方は無事で、未修理の方は全壊した。無事だったタンクでトイレの用水が確保され、住民の衛生を保つことができた。

 阪神・淡路大震災から18年。「人が暮らし、活動する場所で大切な生活用水を“きれいで、安全に、安定して”使用できるようにすることが、わが社の使命であり、これからも貯水タンクや水道をなんとしても守っていきたい」と奥西社長は語った。

(大阪産業創造館 プランナー 齋藤考宏)

きんぱね株式会社 

http://www.kinpane.co.jp/