大阪・梅田に近い豊崎地区で1950年、「まちのクルマのお医者さん」として設立された大阪自動車美装工業。地域に根差し、顧客のカーライフに貢献することを使命としており、車検や整備、板金、クリーニング、車両販売まで、さまざまなサービスを提供している。
丁寧な対応や、分かりやすい説明など、サービス向上に向けて社員が常に心掛けているのが、全社的な価値観の共有だ。
車検や整備などのサービスは通常、顧客には内容が分かりにくい。そのため、まずは顧客にサービス内容を理解してもらうことに重点を置いている。
「単に決められたサービスを提供するだけでは、お客さまには決して満足してもらえない。常に要望に応え、期待以上の満足感をつくらない限り、次の利用はない」と川口裕之社長は言い切る。
川口社長が就任した当時、同社は赤字続きだった。「何とかしないといけない」と危機感を抱いたが、何から着手すべきか分からず、迷いながらも経営者の先輩に相談したり、経営関連の書籍を読んだりする日々が続いた。
そして「経営者としての想いを社員に伝えることが一番大切」と考え、「何が会社の目的なのか」「どういう会社になりたいのか」などを自問自答して書き出し、小冊子の形にまとめた。
「明文化することで、頭の中にぼんやりしていたものが、すっきり整理できた」と振り返る。
川口社長は、全社員を食堂に集め、小冊子を配布。内容を自ら説明した。
さらに毎日朝礼も開き、経営関連の書籍を朗読。社員が朗読後の感想を互いに語り合った。
すると、社員の顧客への対応に変化がみえ始めた。
サービス内容を説明する言葉が以前よりも丁寧になり、顧客から「分かりやすい」と好評を得た。
業績は徐々に回復。取引先からの信頼も高まり、取り扱い台数は急増した。
ハイブリッド車や電気自動車が増えるなど車業界を取り巻く環境は激変しているが、そんな中でも「顧客第一」のサービスを貫いている。
(大阪産業創造館プランナー 齋藤考宏)
▲朝礼で書籍を朗読する社員ら=大阪市北区
本社住所/大阪市北区豊崎1-3-4 連絡先/0120-366-664 資本金/1000万円 設立/1950年4月 事業内容/新車・中古車販売、中古車買取、車検、点検、整備、鈑金・塗装、カーリース・損保代理店
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