産経関西/産創館広場

海外進出成功の秘訣は現地ネットワーク

2013.11.25

海外展開を戦略の主軸の一つとし、果敢に挑戦を続けるものづくり企業がある。大手メーカー向けにキッチン金物などを製造する三栄金属製作所(大阪市生野区)だ。

山下裕司社長の理念は「行動」。37歳で先代の父より会社を継ぎ、45歳で法人化を果たした。財務の透明化をはじめ、新規事業としてのプラスチック製品開発、海外人材の活用など精力的に推進してきた。

現在、最も注力しているのがベトナムでの営業活動だ。現在は妹婿に事業運営を託しているが、5年後には現在の職を退き、自ら現地で経営を手掛けたいと意気込む。ベトナム現地の売り上げは今のところ順調とはいえないものの、プレス加工を手掛ける日系企業はまだ少ないため、まずまずの成果を出しているといい、「ベトナムの産業はまだまだこれから。今後時間をかけて宝を掘り当てたい」と話す。

一般的に「現地に信頼できるパートナーがいるかどうか」が、中小企業の海外進出の成否を分けるといわれる。同社は6年前、ベトナム人技術者2人を期限付きで採用し、現在では技術者としての正規採用と彼らの家族や留学生などのアルバイトを含め、計15人のベトナム人を雇用している。

時間やコストをかけて教育するものの、一定の技術を習得する2~3年目で帰国してしまう人材が多いことが課題だ。しかし、帰国後に現地法人で活躍してくれれば問題はない。

また同社においては将来に不安なく業務に取り組んでくれるため、より高いモチベーションで働いてくれるようになる。結果的に教育コストも無駄にならず、彼らが現地で持つ情報や人脈も活用することができるという。

また、継続して採用活動をしていると、人材斡旋(あっせん)機関のコーディネーターとも親しくなる。現地で営業活動を行う際も通訳やアドバイザーとして厚意で事業をサポートしてくれる。現地の商習慣や生活文化のみならず、国民性なども日本人と比較しながら教えてくれるなど、貴重な情報源になっているそうだ。

中小製造業にとって海外進出はリスクを伴う大きな決断だ。外国人社員や人材コーディネーターなど「人」を通じて得る現地のリアルな情報やネットワークが明暗を分けるのかもしれない。

(大阪産業創造館 プランナー 坂田聡司朗)

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▲ベトナム人社員の技術教育に力を入れる山下裕司社長(中央)

株式会社三栄金属製作所

http://www.sanei-1970.com/