産経関西/産創館広場

全員がプロフェッショナルな会社に

2012.10.01

 グラフィックデザイン、映像制作、WEB制作、イベントプロモーションの4部門を持つ株式会社アバランチ(大阪市西区)。メンバー同士が協力しあうことで、質の高いワンストップサービスを提供している。熊本樹稔社長は企業広告をワンストップで引き受けることで、ハイクオリティのコンテンツをスピーディーかつ低コストで提供するという一貫したポリシーを強調する。

アバランチ

 「会社は公器であり、経営者や株主のものではない」という考え方である。経営方針、社内ルール、人事制度など全てがその考えに基づいて作られており、社名の英表記「AVALANCHE LTD. & THE COMPANY(アバランチという会社とその仲間たち)」にもその思いは込められている。
 例えば、4つの部門それぞれが専門会社としても通用するプロフェッショナル集団になることや、社員が仕事の利益率やコストを意識する「経営社員」になることをめざし、部門採算性が導入されていることもそのひとつ。一見、京セラやJALと同じ方針と思われるかもしれないが、それにリンクして決算賞与という制度が用意されている点が同社のポイントだ。

 この決算賞与とは、年度の決算時に一定以上の経常利益が出た場合、その半分を社員に還元する、という制度である。広告制作業という仕事柄、コンペによる受注が主体のため、毎年の売上が安定せず、融資による資金調達にはリスクが伴う。「社員が安心して仕事に打ち込むには、たとえ1年間仕事がなかったとしても社員に給料が払えて、かつ、いつでも新しい投資ができる資金的余裕を持っておく必要がある」と考えた熊本社長は、そのために必要な自己資本の額を算出し、それを?期までに達成する(現在15期)という目標を掲げ、達成に必要な年間の経常利益額と現在の財務状況を社員に公開している。その目標以上に利益を上げた年は、賞与として分配される。導入して今年で3年目だが、最高で1人に100万円を超える賞与を支払ったことがあるという。

 賞与は部門や個人の成績に応じて配分されるので、部門の予算を達成するためにメンバー同士が協力することはもちろん、場合によっては叱咤(しった)激励しあったりもする。また、いくら部門が予算を達成していても、会社として利益が出ていないと配当は出ないので、必然的に部門間の連携やサポートが生まれる。その結果、本来個人主義的な制作スタッフがチームとして一体になってクライアントに接するため、ハイクオリティなワンストップサービスが提供できるというわけだ。制度や仕組みの導入が、社員のモチベーションの向上だけでなく、提供するサービスのクオリティ向上にも繋がっている好例だが、熊本社長はまだまだ満足していない。試行錯誤の連続、進化の途上にある今後が楽しみだ。

(大阪産業創造館 プランナー 浜田哲史)

株式会社アバランチ

http://www.avalanche.co.jp/