「食中毒なくしたい」現場主義貫く
食品衛生管理の総合支援サービスを手がける株式会社アルコス(大阪市浪速区)。創業以来、岡崎和夫社長は食中毒予防対策を主軸に全力を事業に注いできた。一般的な食中毒の検査では細菌検査の結果を報告書として提出するだけの場合が多い。しかし同社では食中毒を予防するには、工場やお店の現場の意識改革が何より必要だという信念のもと、検査結果の報告に加え顧客の状態に合わせた改善プログラムのコンサルティングに重点を置いている。
同社は2001年に創業。きっかけは1996年に堺市で発生した「O-157学校給食集団食中毒」に強い衝撃を受けたことだった。「この事件以降、国民の衛生管理に対する意識が変わった」と岡崎氏は分析する。
その後も毎年のように全国各地で集団食中毒が発生。「記事になるのは大手企業の場合がほとんどだが、発生件数としては圧倒的に零細企業が多い。この規模の企業に特化した食中毒予防対策にビジネスチャンスがある」。そう考えた岡崎氏は、衛生関連のメーカーで勤務していた経験もあり、食中毒予防対策の専門家として独立を決意した。
ところがいざ創業してみると顧客がまったく増えない。初年度は1370件もの飛び込み営業を行ったが、取引につながったのは3件だけ。実際に事故が起こったこともないのに食中毒予防にコストをかける企業は少なかった。
そこで、2年目からは営業方法を見直し、地域にこだわらず、意識の高い企業へ絞るためホームページを開設。問い合わせがあった企業に営業をする戦略に変えた。インターネットの普及の波にも乗り、翌年には毎日問い合わせが来るようになった。
その後、リーマン・ショックなどの影響で契約先がピーク時の10分の1にまで激減するなどの経営危機もあったが、コストカットや新規開拓を地道に重ね、昨年は売り上げ、利益ともにピーク時の数字に回復させた。
「何とかここまで13年やってこられたのは、自分が目の届く範囲で責任を持って対応できるよう、会社の規模拡大に経営の軸を移さなかったから。創業の精神でもある『現場主義』にこれからもこだわり、食中毒撲滅に邁進していきたい」。岡崎社長の挑戦は続く。
(大阪産業創造館 プランナー 斎藤考宏)
▲工場のスタッフに指導するアルコスの岡崎社長(奥の立っている人物)
株式会社アルコス