お客さまのこだわりを形に 親子で新事業
パティシエや和菓子職人が作る洋菓子や和菓子は、楽しいひと時を過ごすために欠かせないアイテム。お菓子を運ぶケーキ箱は、お店のロゴ、ケーキ箱の色や形状、さらに留め具など、細部までこだわった外観デザインが大事なのはもちろん、中に入っているお菓子が運搬中に崩れることなく、出来上がりそのままの美しい状態を保つ機能が求められる。
そうしたケーキ箱などの企画・製造を行うのが新居紙器株式会社(大阪市中央区)だ。ケーキ箱を含むパッケージを中心として職人のこだわりに応え、顧客に喜んでもらえるようにさまざまな相談に対応している。
同社はもともと流通用段ボールの製造を請け負う会社として1947年に創業した。55年には株式会社となり、71年には八尾市に工場を新設、さらに2年後には本社社屋を新設するなど事業を拡大していった。その過程で社訓や経営方針も定まってきた。
同社の社訓の一つに「創建」という言葉がある。同社にとって「絶えず革新の気概を持つ」ことを意味する。お菓子を運ぶケーキ箱などの企画・製造を行うパッケージ事業は「創建」を実現する事業という位置づけだ。パッケージ事業では大きさに制限はあるが、他所では断られこともある1枚から数百枚程度の極小ロットの注文や、標準品ではできないデザインや中身の保護への工夫、さらに型代不要、素早い試作で、職人の思い描くイメージを注文通りの形に仕上げることで得意先との信頼関係を築いている。
3代目社長の新居章良氏は「紙パッケージは、今では商品カタログを見てインターネットから簡単に注文できる。しかしお店や職人のこだわりを表現しようとするとフェース・トゥー・フェースで相談をしながらケーキ箱をつくりあげることが欠かせない」と語る。
現在取り組んでいるのは事業の転換と承継。これまで以上にパッケージ事業に経営資源を投入し事業の拡大を図っていく。この旗振り役が後継者の新居慶二氏だ。大学で経済学を学び他社に就職後、昨年から同社に戻って事業を引き継ぐ準備を進めている。慶二氏は「お客さまのこだわりを表現するパッケージの提供が当社の利益と次の投資につながり、職場環境の充実や社員の幸福にもつながる。よそではお手上げの難しい注文に挑戦し、喜んでもらえるものを形にしたい」と抱負を語る。
(大阪産業創造館コンサルタント 服部繁一)
▲新事業で革新を目指す新居社長(右)と後継者の慶二氏