柔軟な発想 着物との距離縮める
世の中には一見しただけでコンセプトが伝わる商品がある。株式会社ツインズコーポレーション(大阪市中央区)が提供する簡単着物の和美換(わびかえ)もそんな商材のひとつだ。簡単に脱ぎ着できる着物はネットで検索すれば複数ヒットするが、和美換のビジネスモデルがユニークなのは、主な販路が消費者(BtoC)ではなく企業(BtoB)である点だ。結婚式場などの着せ替え撮影や、外国人向けのツアーや宿泊プランのオプションとしての着物体験、モノポリ全国大会の優勝戦での対戦着、舞台衣装、店舗のユニホームなど、用途に応じて「○○のための着物」として柔軟に対応できるのが特長だ。
社長の小野宏積氏は特許事務所にも勤めており、これまでさまざまな商品アイデアに関わってきた。そんな小野氏が和装ビジネスを始めたきっかけは父親から譲り受けた着物。着てみるとかっこいいが、着るのが難しい。ならば着やすいものを考案すればよい。そう思い立ち、開発に着手した。和装について全く知識がなかったのが逆に柔軟な発想を生み、これまで多くの特許に触れてきた経験も大いに役立った。市販の着物に面ファスナーを縫い付けたり、切り込みを入れたりするなど、大胆な発想で手を加え、元の着物の美しさを損なうことなく簡単に着られる商材へと変身させ、さまざまなシーンで活用されるようになった。
とはいえ、まだまだ着物は気軽に楽しめるものではない。そこで小野氏は、和装姿の人々が突如街中に現れて記念撮影して街を楽しむイベント「キモノでジャック」を5月26日に大阪で開催した。「参加者はもちろん、それを見た人にも着物に興味をもってほしい。大阪城でやるので多くの外国人にもアピールできる」と小野氏。参加者は自前の着物でイベントに来場するため同社のビジネスチャンスには直接つながらないが、現状のままでは市場は盛り上がらない。ファンを増やし、その中で和美換の存在感を示していく。異業種出身者の発想と行動力が着物復権の一助となるか、これからも目が離せない。
(大阪産業創造館 プランナー 原田真愛)
▲普段から着物姿で和装の素晴らしさを伝え歩く小野氏
株式会社ツインズコーポレーション