社員の「人間力」で顧客志向訴え
株式会社ハル(大阪市浪速区)は、かねてから協業関係だった経営コンサルティング会社、カタログやマニュアルの制作会社、マーケティング会社の3社が3年前に統合して誕生した総合マーケティング企業だ。各社が蓄積した独自のノウハウによる相乗効果で、幅広い事業領域に対応できるようになった。4フロアで構成されていた旧オフィスから、昨年12月に社員待望の広いワンフロアに本社を移転した。
移転の際にこだわったことが、顧客や関係会社が立ち寄りやすい場作りだという。ウイスキー・ワイン・泡盛が並ぶバースペースや、セミナーなど多目的に利用される“コラボレーションルーム”に設置された一般開放のライブラリー。そして、そこではスタッフが企画運営するイベントや顧客とのワイン会が定期的に行われている。
顧客と心地よい時間を共有し、コミュニケーションを深めるためのもので、同社が移転前から取り組んでいたものだ。取材時は移転後間もなかったため「未完成」とのことだったが、ゲストにくつろぎを提供する“カンファレンスルーム”に設置された間接照明と絵画をはじめ、話の合間に絶妙な音量で聞こえてくる鳥のさえずりなど、細部にまで配慮された「おもてなし」の心が感じ取れる。
しかし、BtoB業態においてここまで徹底した取り組みは異例ともいえる。ではなぜオフィスに集まってもらうための「おもてなし」を追求するのか。その狙いは「本当は事務所ではなく、社員を見てほしい」という越智賢三会長の思いにある。
「顧客が集う場を作り接点を増やし、そこで交わされる社員との会話や彼らの仕事に対する姿勢にこそ感動してもらいたい。その一方で社員にも、もっと感動してもらえる人間になってほしい」。こうした取り組みが結果的に自社のブランド力につながると考えているからだ。
一見、仕事とは関係なさそうなバースペースは、まるでショールームのように営業戦略の一環として機能している。現に、そこでのコラボレーションによる成果が生まれているとのこと。総合マーケティング会社ならではの巧みな空間設計はもちろんのこと「人は人にしか感動しない」という越智氏の考えからも、真っすぐで顧客志向な企業であることがうかがい知れる。
(大阪産業創造館 プランナー 山崎浩司/2013.01.28現在)
株式会社ハル