野菜愛に満ちた料理 「旨味食堂 ベジ吉」が提供する野菜との新たな出会い
店の入口に置かれた冷蔵ショーケースには見たことのない野菜ばかりが並んでいる。「うちは白い大根は置いてないんです。これが紅くるりという赤い大根、その隣の緑色の大根があおながくん。パレルモは細長いパプリカでフルーツのような酸味と甘みがあります。ピンク色のジャガイモがノーザンルビー、きれいでしょ。紫色のジャガイモはシャドークイーンでポリフェノールがたくさん含まれているんです」。楽しそうに話す岡野氏の話にぐっと引き込まれる。ベジ吉ではこれらの野菜を生かしたメニューを提供している。野菜をどっさり乗せた人気メニューのサラダプレートはまるでカラフルなお花畑のようだ。
接客商売にあこがれ、27歳の時に脱サラをしてバーを開業した。2店目で飲食店にチャレンジ。おでん主体の居酒屋を始め、そこに入れる具材としての野菜の美味しさに気づき、トマトやオクラを人気メニューに育てた。もっと野菜のことを勉強したいと思い、奈良県明日香村の貸農園で周囲の農家に教わりながら生産の経験を積むうちに、「露地野菜の力強さ」を実感。そこで培ったネットワークを生かし、信頼できる農家からの仕入れや、村営の直売所で変わり種の野菜を見つけては直接農家を訪ね、扱う野菜の種類を増やしていった。
自ら直接現地に足を運んで仕入れに出向くのが岡野氏のやり方だ。「何より新鮮な野菜が仕入れられるし、丁寧に育てられた野菜が傷つかないように運びたいんです」。料理を客に提供する時にはさまざまな野菜の魅力とともに生産者の個性もあわせて伝え、客と一緒に農家で収穫体験をするツアーも開催する。「流通に乗りにくい野菜を真摯に生産している農家に触れることで、農業の苦労ややりがいも知ってほしい」と語る。一昨年夏、野菜への思いが詰まった店のWebサイトを見たイタリア人女性から「ベジ吉で料理人として働きたい」と連絡が入った。岡野氏が労働ビザ取得に奔走し、10月から働き始め、彼女が考案した新しいメニューも開発中だ。
取材が終わりかけた頃、「あーそうそう、フィンガーライムって知ってます?」。厨房から持ってきたのは親指大ほどの大きさの赤くて小さなウリのような野菜。岡野氏はそれを目の前で縦に割って中身を絞り出す。「この細かい粒がシャキシャキの歯応えでめっちゃおいしいんですよ。それでね…」。岡野氏の野菜愛はとどまることを知らない。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
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【大阪・福島】こだわり野菜で作るインスタ映え料理!レモンの仕入れに密着!【ベジ吉】ニンベンオモチカラ#2
自他ともに認める「野菜馬鹿 ベジ吉」代表 岡野さん。今回、皮まで食べれる珍しいレモンを求めて、香川県までの仕入れにBplatz編集部がカメラ片手に同行させていただき、現地での生産者とのふれあいに密着。道中、野菜に対する熱い思いや、香川県でひそかに計画している夢についても語っていただきました。