障がい者専門の在宅訪問薬局で利用者も薬剤師も暮らしやすい社会へ
2019年に障がい者専門のアウトリーチ(在宅訪問)薬局をまずは個人事業主として開局したカンエが、2021年に株式会社カンエとして、この仕組みを全国に届けるためフランチャイズ展開も視野にいれて2店舗目として住吉大社店を開局した。
薬局へ薬を取りに行けない在宅療養の障がいがある方のために、訪問薬剤師が自宅(施設)まで薬を届け、服薬指導や残薬の有無の確認、処方医への報告などを行う。
利用者は服薬数の多い精神障がいのある方が中心だ。飲み忘れや飲み間違いがないよう同時期に飲む薬は一包化して提供する。「精神障がいの場合、調子がいい時に勝手に薬をやめてしまうと、落ちた時に前より悪くなることも。いい状態をキープするために、薬について理解していただけるよう普段からお話しすることが重要になる」と訪問薬剤師として活動する代表取締役の松本朋子氏。
この事業を志したきっかけは長年調剤薬局で勤務した経験から。「障がいがある方が薬局に来られることはほとんどなく、ご家族からご本人の状態や介護の悩みをお聞きした時に、薬局で待っているだけじゃなく、訪問して心に寄り添う医療サービスをしたいと思った」と振り返る。
現在、利用者からは「このサービスがあって良かった」「不安がなくなった」と喜ばれているが、障がいのある方が利用できることはあまり知られていないのが現状だ。
そこで、就労継続支援B型の事業所やグループホーム、自閉症スペクトラム児・者を支援する親の会などでお薬教室を開催。児童には紙芝居や指人形でわかりやすく、大人の利用者やスタッフには質疑応答も加えるなど工夫を凝らし、薬に関する正しい情報と訪問薬剤師について伝えている。
ほかにも、数々のビジネスコンテストに参加。障がい者専門の訪問薬剤管理事業は、一般的な薬局に比べて低コストで開局でき、保険点数も高いことから収益率は60%が見込めるほか、訪問スケジュールを調整できるため子育て中の薬剤師にとっても働きやすく、女性の活躍推進につなげられる事業モデルであることをアピールした。障がい者数は年々増えているのでニーズはある一方、訪問エリアは薬局から16km圏内と定められているため、多くの患者へサービスを届けるためにフランチャイズ展開で広げていくことも目標に掲げた。審査を通じて事業展開も具体化でき、薬局オーナー希望者から問い合わせも入ってきている。
2021年9月に2店舗目となる住吉大社店を開局。人に任せるケースとしてデータを検証中だ。10月には大阪トップランナー育成事業の認定プロジェクトにも選ばれた。「障がいのある方が当たり前の医療サービスとして利用して、安心して生活できる社会にしていきたいですし、自分のスタイルに合わせてやりがいのある仕事をしたい女性薬剤師が活躍できる環境をつくりたい」と事業のブラッシュアップを進めていく。
(取材・文/三枝ゆり)
https://www.osaka-toprunner.jp/
◎カンエの詳しいページは↓コチラ↓
https://www.osaka-toprunner.jp/project/introduce/kannerelations/