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地域に拓き、若い人が働ける居場所を考える

2022.10.03

その人らしい生き方ができるようにリハビリを兼ねた作業を通じ心身両面からサポートを行う作業療法士。活躍の場は病院や介護施設などが大半だが、辻氏のように就労継続支援事業所などで独立する人が少しずつ増えている。

中学3年生の時にフリーマーケットに出店し「人と対話しながらサービスを提供する仕事で独立したい」と思うようになった辻氏だが、作業療法士に憧れもあったためまずは資格を取得、その後は精神科デイケア施設で訓練メニューのプログラムづくりを経験し、病院で患者のリハビリ支援に従事した。「患者が退院した後も関わりたい」と思うようになり、障がい者の就労移行支援事業を行うNPOで勤務。「就労することが難しくて引きこもりがちな若い人の居場所をつくりたい」と2021年10月にわくわく堂を開所した。

「主体的な活動は脳を元気にさせる」を合言葉に、利用者の思いを汲み取り、特性に合わせ、接客、軽作業などを割り当て、工賃を支払う。資格取得をめざす実習生を受け入れ、多様な人と関わることでその人らしさを引き出している。無口だった利用者が積極的に質問をしたり、あいさつをするようになったりと成長が見られることがうれしい」と辻氏。地域に開かれ、後に続く作業療法士の模範になる施設づくりをめざしている。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

◎創業:2021年10月
◎従業員数:3名
◎準備期間:2年
◎開業資金:自己資金200万、借入金1,100万円
施設の改装費にお金をかけ、日本政策金融公庫に加え、民間銀行から融資を受けた。
◎改装費:650万円
就労継続支援事業所の要件として求められる広さの事務所を確保し、自動火災報知機も設置。明るい採光と風通しも確保した。
◎家賃と人件費:月70万円
開業後3カ月分の人件費と家賃を手もとに置いてスタートした。

― 起業年表(起業ストーリー)―
◎2009年4月
作業療法士の資格を取得後、精神科デイケア施設で作業療法室の立ち上げにかかわる。
◎2010年4月
現場で患者のリハビリに関わるべく府立病院に就職。
◎2013年4月
障がい者の就労移行支援を行うNPOに就職。当初は3年で独立する予定でいたが引き止められるうちに8年半に延びた。
◎2021年10月
わくわく堂を開所。

― 働きながら起業準備してみて ―
◎良かった点
働くうちに自分のやるべき方向性が定まった。妻と2人の子どものためにも、フルタイムで働きながら起業準備するしかなかった。
◎苦労した点
独立したいという思いはあっても行動に移す人はなかなかいない。理解をしてくれた家族のためにも開業後半年はがむしゃらに働いた。
◎気を付けるべき点
前職では管理職を務めていたため、退職後に迷惑をかけないようにしっかりと引継ぎに時間をかけた。そのNPOとは今も仕事でつながっており、良好な関係を築いている。

代表 辻 寛之氏

― <起業・独立>ココがポイント ―
いい意味で「他人を頼る」が辻さんの起業ポイント。まず、ご家族、ご親族、前勤務先など関係先の応援が、大きな支えになったと思います。また、働きながらの起業準備は、使える時間が限られます。事業計画の策定や法人設立、融資の申込など未経験分野は、産創館での専門家相談や民間サービスを活用。数あるタスクを整理し、自分しかできないことに集中して取り組まれました。起業の経験は、利用者や地域に頼られる現在の施設づくりにつながっていると思います。
(大阪産業創造館 スタッフコンサルタント 高松 留美)

【 経営相談室 】https://www.sansokan.jp/akinai

合同会社わくわく堂

代表

辻 寛之氏

https://workwork.co.jp

事業内容/就労継続支援B型事業所の運営