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スタートアップビザの取得で、日本での起業を円滑に

2022.09.15

外国人の起業家にとって開業の準備はハードルの高い作業です。
そこで大阪市では、最長で1年在留できるスタートアップビザの取得を促し、じっくり開業準備ができるよう後押ししています。
窓口を担当する大阪産業創造館 創業支援チームの曽川と、制度を利用し大阪・ミナミに「オールドカイロカフェ」を起業したアハメドさんに話を聞きました。

 
――「スタートアップビザ」について教えてください。

曽川:外国人が日本で事業をするためには経営・管理の在留資格(ビザ)を取得することが必須です。ただ、取得に当たっては事務所の開設、常勤2名以上の雇用または500万円以上の国内での投資、などの条件を満たす必要がある一方で、短期ビザ(90日以内)ではそもそも事務所の物件契約ができないなど、日本人の協力者なしに経営・管理ビザを取得するのは難しいという実情がありました。そこで経済産業省が外国人起業活動促進事業として設けたのが「スタートアップビザ」です。

自治体の審査を経て認定を受けると、起業に向けた準備が「特定活動」として認められ、最長1年間(6ヵ月後に更新が必要)国内に留まることができるので、時間をかけて経営・管理ビザを取得することができます。大阪市では2019年5月から事業を行っており、この4年の間に認定された方がアハメドさんを含め14人います。

 
――アハメドさんはどうして大阪で起業しようと思われたのですか?

アハメド:エジプトで貿易・観光会社をしており、日本人のお客さんと関わることも多かったことから日本でエジプト文化を紹介する店を開きたいと思うようになりました。これまで何度か来日する中で、大阪はエジプトと似て夜の街がにぎやかで、人が優しく、自分に合っていたので、大阪で起業しようと考えました。

 
――事業を始めるに当たって苦労したことは。

アハメド:2020年の初めに来日しました。会社を設立し、銀行口座にも入金を済ませるなどあらかじめ準備ができていたのですが、在留期間が3カ月しかない観光ビザでは、自分が主体となって進めるべき契約や手続きをスムーズに進めることができず困っていました。かと言って、銀行口座に事業資金を残したままエジプトに帰国することも避けたいと思っていたタイミングで行政書士の方を通じて大阪市がスタートアップビザを出していることを知りました。

すぐに窓口の大阪産業創造館の担当者を訪ねると、とてもウェルカムな感じで迎えてくれたので頑張ろうと思えました。スタートアップビザの申請に必要な事業計画づくりについても、どうすれば事業を順調に継続させられるかについてアドバイスをいただくなど親身になって相談に乗ってもらいました。

2020年8月にスタートアップビザを無事取得することができ、事務所の契約についてもそのおかげで無事済ませることができ、同年11月に経営管理ビザも取得できました。大阪市の認定を受けたという信用も大きな後押しになりましたね。

代表 アハメド サイエド氏

 
――どのような気持ちで相談に来る外国人の方に対応されていますか。

曽川:日本人でも起業するのは大変なことなのに、異国の地で創業しようとされる意欲に対してまず尊敬の念をもって接しています。まったく勝手のわからない日本で、全体像が見えないまま手続きを進めていくのは不安だろうと思います。仮に私が外国で創業する場合にこんなことで困るだろうな、こんなことがわかればありがたいな、ということを想像しながら相談に乗るようにしています。

 
――お店の特長を教えてください。

アハメド:オープンしてちょうど2年になります。店の特長は3つあります。大阪ではめずらしいエジプト料理を出すこと、シーシャ(水タバコ)を本格的に楽しめること、そして、ベリーダンスやアラビア語をはじめエジプト文化に触れられることです。当初はコロナ禍もありイベントを開くことは難しかったので、シーシャに力を入れ、お酒を飲まなくても盛り上がれるシーシャの楽しみを伝えることでお客さんが少しずつ増えていきました。

 
――店を開いた後の大阪産業創造館とのかかわりは。

アハメド:開業してからも問題は次々と生じます。その中で自分だけでは解決できないことについては声をかけやすい産創館に相談に乗ってもらいました。すぐに専門家の方につないでもらい、無事解決することができました。とても感謝していますし、何かあれば相談に乗ってもらえるという安心感があります。

 
――これから力を入れていこうとしていることは。

アハメド:飲食店経営を目的として経営管理ビザを取得する場合、 申請者はあくまで経営者(管理者)であり、調理をしたり接客をしたりといういわゆる”現場の業務”に従事ができないため、オープン当初から調理・接客のための日本人従業員を雇う必要があり、毎月の固定費も多くかかりました。

また、日本人スタッフにエジプトの本場の味を伝えることに苦労しました。ただ、今ではスタッフが育ってくれていますし、エジプトからおいしい食材を安定的に入手するルートも整ったので、これからはエジプト料理にさらに力を入れていきたいと思っています。スタッフがアラビア語圏のお客さんともっとコミュニケーションを取りたいと自分で学びに行くほどやる気を持ってくれているのがとてもうれしいですね。

 
――これから大阪で起業を考えている外国人にアドバイスを。

アハメド:日本に住もうとするならまず言語をしゃべれるようにしておくこと。そして、以前より社会が変化するスピードが速いのでしっかりと動きを捉えることが大事です。例えばシーシャも最初は競合店が少なかったのですが、今ではたくさん増えています。スタートアップビザを活用し、来日前からしっかり準備を進めてほしいと思います。できることはアドバイスしますのでぜひ大阪で一緒にビジネスをしましょう!

 
――産創館からはどのように呼びかけたいですか。

曽川:起業相談のあった外国人の方にはアハメドさんを紹介するほど私たちにとっても頼れる存在です。単に日本の在留資格を得たいがために起業を手段とするのではなく、日本でビジネスをしたいという強い想いを持ちしっかり準備をされているアハメドさんのような外国人の方に向けて、正しい情報発信をしていきたいと考えています。大阪を起業の場所として選んでいただいたからには、私たちも全力でサポートしますので、気軽に相談してください。

代表 アハメド サイエド氏(右)、大阪産業創造館 創業支援チーム 曽川 乃麻(左)

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

大阪産業創造館 外国人起業促進支援窓口
動画で解説中!詳しくはコチラ ⇒ https://www.sansokan.jp/startupvisa/

オールドカイロカフェ(株式会社OLD CAIRO)

代表

アハメド サイエド氏

https://www.instagram.com/oldcairocafe.osaka/

事業内容/カフェの運営