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負けん気バネに自らやりたいことを実践

2022.10.07

「9割は意地でしたね」。森氏は開業した経緯に思いをはせながらそう語る。

旅行会社での勤務、特にハワイのツアー企画に長く携わってきたが、家族との時間を取ろうと東京から実家のある奈良に戻ってきたのは2015年のこと。「ハワイのイベントを企画してほしい」と大型複合施設の運営会社に誘われたが、実際に任されたのはジェラート店だった。売上げが伸び悩む中で打開策のために次々に行った提案も実現には至らず、そこへ追い打ちをかけるようにコロナ禍に見舞われ、閉店が決まった。

「閉めるなら自分が引き継いでやります」。負けん気の強さがそう言わせた。「じゃあ機械設備はそのまま持って行っていい」。融資が得られるめどが立ち、以前から狙っていた店が空き店舗のままであることを知った。「これはやれってことやな」。

ピスタチオやチョコレートなど本場イタリアから仕入れた主原料による濃厚な味が自慢だ。通販、宅配、料飲店向けOEM商品の開発など自分がやりたかったことに次々に挑み、努力したことが成果として見えることに醍醐味を感じているという森氏の次なる目標は「FC展開」だ。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

◎創業:2021年4月
◎準備期間:10カ月
◎従業員数:10名(パート・アルバイト含む)
◎開業資金:1,000万円(うち自己資金300万円)
◎造作譲渡:500万円
15年続いたイタリアンドルチェの店をそのまま継承するために必要な金額だった。
◎改装費:200万円
元々イタリア人が経営していたケーキ屋さんを引き継ぎ、元あった設備を売却することで開業資金を補填することができた。

― 起業年表(起業ストーリー)―
◎1996年4月
旅行会社に入社。入社1年後に東京に赴任し、3年目にハワイに駐在。その後、ハワイ州観光局で営業部長として旅行会社を対象にハワイの新しいアクティビティなどを紹介。
◎2018年4月
実家のある奈良に戻った後、ハワイに精通した経歴を生かし大阪の大型複合施設に入社。その後、施設内のジェラート店の店長に。
◎2020年10月
大阪産業創造館で飲食店開業者向けセミナーを受講し、融資のめどをつける。
◎2021年4月
3月に閉店したジェラート店を個人で引き継ぎ、4月に大阪市にある靭公園北エリアに開業。

― 働きながら起業準備してみて ―
◎良かった点
店の資産を継承して開業することができ、初期投資を抑えることができた。アルバイトが新しい店についてきてくれ、新人バイトの教育を任せることができた。
◎苦労した点
3,000人のフォロワーがいたInstagramなどのSNSは継承することができなかった。そのため、独立後に改めて立ち上げて一から集客・プロモーションせざるを得なかった。
◎気を付けるべき点
閉める店をそのまま個人が受け継ぐ場合は、それをよく思われない場合がある。そのため、独立開業することを極力外に漏らさないようにした。

代表 森 義直氏

― <起業・独立>ココがポイント ―
初めて会った時には既に物件のめどが立ち、これから必要な準備や作業も決まっていて、ただ飲食経験が少なかったことから飲食店開業サポート事業「あきない虎の穴」を受講。さらに、資金調達に不安があったことから経営相談室を利用して融資申請に耐えうる事業計画書の作成を進められました。会社員の仕事をしながら「あきない虎の穴」を受講し、その合間に経営相談室のコンサルタントと面談するというハードなスケジュールを経ての開業でしたが、たぶん開業後の方がもっとハードだとご本人は言うでしょうね(笑)。
(大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)

【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora

FLOR GELATO ITALIANO OSAKA

代表

森 義直氏

https://www.florjapan.com/

事業内容/ジェラート店の運営