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変わる中小企業の採用戦略

2022.08.09

有効求人倍率が上昇し、中小企業の採用が厳しさを増している。大阪産業創造館 経営相談室 齋藤考宏氏と大阪産業局 採用戦略アドバイザー 寺田光宏氏に、中小企業の採用戦略のあり方について話を聞きました。

 
◉ネット活用は必須、シニアや副業人材の活用も

―― 中小企業の採用がここにきてまた厳しくなっていますが、なぜでしょうか?

寺田:大阪府の有効求人倍率が再び1を超えてきました。中小企業はこの2年間採用を控えてきただけに、いわばお腹が空いた状態。コロナ禍で転職希望者は増えていますが、働き方改革などを見据えて様子見をしている人も多く、なかなか採用につながっていませんね。

―― 採用の手法も多様化していますね。

寺田:ネットを使った求人が当たり前になりました。ハローワークの求人情報もネットで閲覧できるようになり若い人のアクセスが増えています。従来の人材サービス会社に加え、GoogleやYahoo !も求人サービスに参入し選択肢も増えました。

齋藤:ひと昔前は“転職は40歳まで“と言われてきましたが、現在は45~50歳も当たり前になってきています。シニアで働きたいという人も増えていますし、また、コロナ禍で在宅の時間が増えたことで副業人材として働きたいという人も増えています。こうした変化をとらえ採用活動に取り組む必要がありますね。

大阪産業局 採用戦略アドバイザー 寺田 光宏氏

 
◉求める人材のスペックを明確にし、間口を広げる

―― どのような点に注意して採用活動を行うべきでしょうか。

齋藤:採用の確率を上げるにはハローワーク以外の手段に目を向けるべき。求めるスペックが高いほど経費も高くなるので、求める人材のスペックを明確にしたうえで使う媒体を選ぶといいですね。

寺田:「新規事業を立ち上げたいからそれを任せられる人材を」と言っても曖昧ですよね。どのような新規事業を立ち上げ、具体的に何を任せるのかを明確に言語化していく作業が必要です。そうすれば異業種からでも採用でき、間口が広がります。

齋藤:「採用」するという認識も改めないといけませんね。プロジェクト単位の仕事が増えて来つつある今、欧米のように職務内容を明確に定義して契約を結ぶジョブ型の雇用が増えています。そうなると社員として採用せずとも、副業人材や顧問として雇用するというように選択肢が増えます。

寺田:「採用力」は、企業の規模や商品・サービスなど目に見える財産として表現できる「企業力」と、給料、休暇などの「応募条件」、そして広告の活用や採用コンテンツなどの「採用活動力」に分けられます。この中ですぐにでも変えられるのは「採用活動力」。求職者は「だれと働くか」を重視しているので、社長や社員の考えや人となりを載せるなどターゲットに届くメッセージの発信に取り組んでほしいですね。

大阪産業創造館 経営相談室 齋藤 考宏氏

 
◉インターンシップ、外国人の活用も

―― 採用をめぐる変化で他に目を向けておくべきことはありますか?

齋藤:インターンシップの活用ですね。最近は、3カ月や半年という長い期間で、新規事業を社員と一緒に考えるという実践的な内容が増え、そのまま新卒採用につながるケースも多いです。外国人材の活用にも目を向けるべきでしょう。国は高度人材に加え、特定技能の在留資格を設けることで外国人材の受け入れを増やそうとしていますね。

―― その他にはどのようなサービスを行っていますか?

齋藤:大手企業の若手人材をベンチャー・スタートアップ企業に研修派遣する事業も行っています。中小企業にとっては大手企業で培ったスキルの活用につながります。また、外国人のマッチング事業も手がけていて、初めての外国人採用は中小企業にとってハードルが高いので専門家による相談窓口も設けています。

寺田:採用媒体や自社HPで採用情報の提供はもちろん、WEBやSNSを上手く使い、新卒だけに目を向けるのではなく第二新卒や女性の登用も考えていただく必要があると思います。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

大阪産業創造館 経営相談室 齋藤 考宏氏
大阪産業局 採用戦略アドバイザー 寺田 光宏氏