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技術も精神も素直に継承する外国人材が活躍

2022.08.03

高度な技術で、難易度の高い要望に応え続ける株式会社三共製作所。精密機械部品の切削加工メーカーとして、自動車や航空機、半導体といった多岐にわたる業界の企業と取引を重ねる。顧客は東証一部企業など、約150社。「売り込むより、お客様からご相談をいただくケースが多いですね」と柔和な笑顔で語るのは、代表の松本氏。

高品質・高精度という“日本のものづくりのお家芸”で高評価を得る同社を支えるのが、“外国人材”だ。ベトナムやミャンマーなどアジアを中心に、ブラジルやドイツ、フランスなど12カ国の多国籍なメンバーが集う。「根気強く、真面目で器用。仕事に邁進してくれる」。今、製造現場の110名のうち、70名が外国人。その多くが技能実習生として同社の技術を学びながら身に付け、ものづくりに励む。

外国人採用に至ったきっかけは、バブル時代。「慢性的な人手不足で、迎えに行かないと出社しなかったり、さぼって仕事しない人でも雇用しなければならない状態(笑)。そこで、優秀な外国人に目を向けました。当時ハイパーインフレだったブラジルから、弁護士資格を持つような人たちが“とにかく日本で稼ぎたい!”と来日。残業を志願するほど意欲旺盛でした」と、振り返る。

その後、2000年に、当時まだ労働市場として未開の地だったベトナムに飛ぶ。「現地で、一生懸命働く姿勢や優しさに触れ、相性ピッタリだなと。すぐに3名と契約しました」。現在は、現地の日本語学校と提携し、安定した採用ノウハウを形成している。また、2014年にはBASIC日本語学院を大正区に設立し、数多くの留学生を受け入れている。

外国人材をスムーズに受け入れられた理由について「元々、外国人とすぐ打ち解けるという特性が私自身にあった」と、松本氏。「生まれ育ちが戦後の長屋で多様な環境でした。もう一つは、中学3年生の時の万博。日々通っていたのですが、外国人が優しかった。その2つが原体験」と分析する。

もっとも、当初は社内から反対の声も出たという。しかし、真面目に働き、職人たちの技を素直に吸収する外国人たちとすぐ気心が通じるように。「職人気質な日本人従業員ほど、“一緒に魚釣りを楽しんだ。温泉で語り合った”と報告してくれます」。

外国人がイキイキ活躍できるマネジメントの秘訣は「理屈ではなく“情”。こちらも愛情を持って素直に接することで、わかり合える。理屈が優先されがちな今の日本では、失われた感覚かもしれません」。

将来的には「これまでの集大成として、介護福祉事業を展開したい。社会貢献8割、国際交流2割と考えています」と松本氏。ものづくりの本質を受け継ぐ人材を育てながら、世界と日本の人材を繋ぎ続ける。

代表取締役CEO 松本 輝雅氏

(取材・文/仲西俊光 写真/福永浩二)

株式会社三共製作所

代表取締役CEO

松本 輝雅氏

http://www.sankyo-mfg.co.jp

事業内容/精密機械部品の切削加工メーカー