1000年続く仕事、技術を現代に捉えなおす

 
岡本氏は97年続く表具屋「清華堂」の4代目だ。

表具屋とは、掛け軸や屏風などの美術品を新調、修復する仕事で、古地図や写真などの修復依頼も舞い込む。クリーニング、洗い、剥がし、補強など作業には根気強さ、丁寧さに加え化学的な知識も求められる。

住宅の洋風化で和室が減り、掛け軸をかける床の間が減りつつある今、府の組合に所属する表具業者もこの50年で10分の1に減った。

「継ぐな」と諭す父を振り切ってあえて跡継ぎを志向したのは「1000年の歴史を持つ表具業ならではの技術、ノウハウを現代風に生まれ変わらせてみたい」との思いを形にする可能性にかけてみたかったからだ。

 

 

 
建設会社での4年間の勤務を経て家業に戻ったのは2017年8月のこと。1年目は、自分なりに表具業の仕事を整理し直し、展示や装飾などの「飾る」、修復する「直す」、長持ちさせ、保管する「守る」という3つのソリューションとしてわかりやすく表現した。

同時に、顧客である寺院を訪ねるうちに「虫干しミュージアム」構想の着想に至る。掛け軸は虫や湿気から守るため年に1回、日陰で風にさらす「虫干し」という作業が欠かせない。

だが主の高齢化が進み、作業が体力的に難しくなりつつある。放っておけば貴重な美術品の滅失につながりかねない。
そこで掛け軸を一堂に集めて虫干しているところを多くの人に見てもらおうと考えた。

四天王寺周辺は全国一の寺院密集度を誇るエリア。「中には文化財級の寺宝もあり、宗派ごとに比べるような企画展も考えられます。寺院に興味を持つ人が増えれば、寺巡りをする人も増え、それが寺院の存続、観光にもつながる」と岡本氏。

 

取締役 岡本諭志氏

 
だが、入場者として当て込んでいたインバウンドがコロナ禍で激減。事業案は再考を余儀なくされた。

そこで新たな事業機会を見出すところが岡本氏の柔軟なところだ。「表具の仕事に美術品を保存箱に入れ劣化から守るコーティング技術があるのですが、これを抗ウイルスの技術に転用できないかと考えたのです」。

たまたま2年前に美術館から蔵をカビから守れないかという依頼を受け、研究を進めていたことで動きは素早かった。抗ウイルスに効果的な溶剤をあらためて探し、噴霧技術も修得。そのうえSIAA(抗菌製品技術協議会)が付与する「抗ウイルス加工」の認証マークをいち早く取得した。

現在、近鉄電車の全1968両にコーティングを終え、その後も航空会社、百貨店で採用が広がっている。

 
表具業ならではの長年の知見を時流に合わせてとらえなおしたことで、当たり前の風景に宝があることを知った。

これからも表具業を基点に「自分がやる意味のある仕事」を見出していくつもりだ。

 

 
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

2020年11月16日
株式会社清華堂
取締役  
岡本 諭志氏
事業内容/各種表具製品の製造・修復

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