《講演録》心づくしの採用が起こした奇跡〜ほぼ素人・味方なしから始まった人事・採用改革記【後編】
▶人を大切にする会社の共通意識を育て、内定者研修で体現する。元気いっぱいの新入社員に
内定を出す段階で、会社との信頼関係が築けているように。そのために、人事部だけの採用活動はしません。結婚前に家族と対面するように、毎年、さまざまな部署から集まった15〜20名の採用チームを作ります。
「おもてなし採用活動」と呼んでいますが、要は学生と同じ目線に立ち、大切な存在だと認識すること。そして、小川珈琲という職場は、自分の存在価値を見出すところであり、働く仲間との絆を作る場所だと捉え、だからこそ、「人も資産である」ということを全員で確認します。
もし、職場が業績や利益を上げるためにあると認識違いをすると、人がコストの一つになりかねないので、ここは注意深く進めます。
信頼を得るには、悪いところも見せることが大切です。社員自身が、「今はこうだが3年後にはこうする」「新入社員が来るまでにここを直す」と約束すれば、本人の成長の機会にもなりますし、帰属意識も芽生えます。
人材を育てていけば、一人ひとりが風土を作っていってくれます。
内定から入社までは、一ヶ月半に一回集まって内定者研修を実施。共に経営を盛り立てていく同士、早く会社に馴染んでもらうために、製造・人事・営業などあらゆる部署に出かけます。
一緒にものづくりをしたり、ワークショップを行います。いろんな立場での苦労や喜びを知り、仲間との絆を育み、「人が資産」を体現できる場になっていると思います。
回を重ねるごとに入社への不安が減り、ワクワクすることが増え、周りにも伝染していきます。だから、入社当日はすごく元気(笑)。打ち合わせなしでも、新入社員が真っ先に立って挨拶しています。
新入社員を迎え入れる前には、管理職メンバーにも彼らの人となりを紹介しています。これまでの発言や行動など、いいところを共有するのです。
入社式は、社員の誰もが参加できます。厳粛な空気はなく、賑やか。私自身が入社した時の冷たい視線があったおかげで(笑)、温かく受け入れる風土を大事にしています。
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