事業承継

《講演録》「タニタ社員食堂」誕生のワケに迫る、世代交代のビジネスチャンス

2019.04.18

 
>>> 会社を変えるポイントは「コンセプトを変える」

会社を引き継いだ後、事業をどうやって拡大していくか、どうやって次のステップにいくか悩みました。自分の中のターニングポイントは「コンセプトを変える」というところだったと思います。私は大阪で営業を担当していましたが、どう考えてもマーケットは大阪より東京の方が大きい、さらには東京よりアメリカの方が大きい、そう思ってアメリカに行きました。

アメリカでは工場や美術館など3か月ほど、さまざまなところを視察しビジネスについて話をしましたが、アメリカは時流にあったものをやっているなあ、自分のビジネスに対する考えは固定観念が強かったなあと感じました。ビジネスをどう進めてどう展開していくかというコンセプトを作ることが非常に大事だと痛感しました。

帰国し、「“体重計”のビジネスから“体重”のビジネスに変える」というコンセプトを掲げました。どういう体重が良くて、なぜ体重は増えてなぜ減るのか。技術者はそれに対して何も言えませんでした。ですので、体重とは何かをまずは知ろう!というところから始めました。

体重は何を測っているんだろう?健康を測っているのではないか?と考え、減量センターを作り、機械が置いてあるだけのジムではなく、食や運動も含めて減量する研究所を作りました。

議論の最初の段階で医療関係者からの意見「体重が重いのが肥満じゃないんですよ」という言葉が、まさに目からウロコでした。脂肪が多いのが肥満、いわゆる体脂肪です。体脂肪率の理論を体重計に搭載したいと考えましたが、みんなに反対され、結局新卒と数名のメンバーでどうにか形にし、顧客の減量や肥満管理などを行い研究所を運営していきました。

 
>>> 健康を測る「タニタの社員食堂」

そこから紆余曲折あり、研究所を撤退することになりました。研究所のノウハウや従業員を活かして街の健康食堂を作ろうなど意見はありましたが、結局それを社員食堂として活用しようじゃないかという話になりました。これが、「タニタの社員食堂」の始まりです。

父の時代に商売は3本の矢という考えでしたが、私は事業としては体重計だけにしました。ならばその中で矢を作っていこうと、成人向けの体重計だけでなく、赤ちゃん向けから高齢者向けまで生涯使える体重計を作ろうと考えました。また、女性用の計りや糖質の計りも出しました。そして、家庭用だけでなく病院用体重計も作りました。今では、学校やホテル・旅館など、販路ごとの計りを作っています。

業界ナンバーワンということになると、コスト競争力も必要ということで中国に工場を作りました。販路も拡大していき、世界各国に展開しました。体脂肪計というオンリーワンの商品を開発し、体重計を世界で1番売ったから世界1位になったということですね。

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株式会社タニタ

前代表取締役社長

谷田 大輔氏

http://www.tanita.co.jp

事業内容/家庭用・業務用計量器などの製造・販売