《講演録》「タニタ社員食堂」誕生のワケに迫る、世代交代のビジネスチャンス
>>> 事業を譲り受けた最初にした「業績の見える化」
業績赤字が3期続いたタニタは、プレスの得意な下町の工場で、どうにか自社ブランドを作ってきたような会社でした。先代からの考え方で、事業は3本の矢という概念があり、3つの事業をしていました。それが、「ライター事業、トースター事業、ヘルスメーター事業」でした。
まずは現状を知ろうと、事業部制を導入し、事業の採算性を確認しました。1年経ったら各事業の採算性が明確になりました。ヘルスメーターだけが業績が上がっていて他の2事業は赤字でした。
事業部制にし採算を明確にすることで、私の眼だけではなく全社員の目からみて業績が「見える化」されました。そしてその先にあったのが、「赤字を減らすか、黒字を伸ばすか」という話でした。私の方針は、黒字をさらに黒字化するという手法でした。
黒字であるヘルスメーター事業については、部品の仕入れを抑えるため、部品を内製化しました。さらに、工程の効率化を図るためには都内の本社ビル工場は手狭だったため、秋田に一貫生産工場を作ることにしました。そこで社員に秋田へ異動してほしいと考えたのですが、誰も異動してくれませんでした。
結局現地で新卒を採用しました。最終的には東京本社社員の平均年齢は40歳、秋田工場の平均年齢は19歳と若い社員中心になったうえ、工程も効率化され経費が抑えられるようになりました。
ライター事業は、試行錯誤しながら新商品の開発をしましたが、後続品がたくさん出てきてしまい、赤字が大きくなったことから、事業を同業他社に譲ることになりました。
また、トースター事業に関しては、トースターの電機ノウハウを活かしヘルスメーターの販路を活かせる電気ポットを新商品として販売しました。しかし3年しないうちにやはり後続品ができてきて、大手が出てくるたびにタニタの商品が棚から下げられるというサイクルになってしまい撤退しました。
>>> 社員の士気を上げるためにも、大きな目標設定をする
2つの事業を辞めた時、会社の中が非常に暗くなりました。だからこそ『世界一のヘルスメーターメーカーになりたい!』と目標を掲げました。
ヘルスメーター業界で、一体どこの会社が世界ナンバーワンなのか?そんなことすら知らなかったので、そこからマーケティングリサーチをしたというような状況でした。ですが、目標を明確にすることは非常に大切です。今、企業コンサルタントをしていてそれは強く感じます。
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